AP/AFLO=写真
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日産自動車代表取締役COO 日本自動車工業会会長(しが・としゆき)
1953年、和歌山県生まれ。76年、大阪府立大学卒業後、日産自動車入社。2005年にCOO就任。10年に日本自動車工業会会長就任。


 

「与野党の壁を越えて政治の力を結集し、スピード感を持って取り組んでほしい」。新内閣発足直後、自動車業界を代表し、野田佳彦首相に円高是正などを強く訴えかけた。車づくりを支える多くの部品関連企業が倒産、新興国などに逃げ出すのを黙って見送るわけにはいかないからだ。日本再生への使命感は人一倍強い。もはや各社によるコスト削減などの努力で克服できる為替水準ではなく、まさに国内空洞化の危機に直面している。それでも政府・日銀の反応は鈍く、いらだちと怒りが極限まで達しつつある。

業界団体会長のイスはいわば“名誉職”。日本自動車工業会の会長に就任後は円高、自由貿易協定問題などに震災後の電力不足も加わったいわゆる「6重苦」に。陳情も増えて安閑としてはいられなくなった。3.11後には、ライバルの経営者同士が携帯電話で情報を共有。寸断されたサプライチェーンの復旧に“オールジャパン”で取り組んだ。節電対策でも夏場の「土日操業」の火付け役になるなど、ざっくばらんな人柄とフットワークのよさから司令塔の任務を担うことが多い。

旧体制の日産では傍流のマリン事業を歩み、左遷先のジャカルタでは孤独感から「円形脱毛症」になったほどの苦労人だが、カルロス・ゴーン社長に企画力や調整能力を買われてナンバー2に大抜擢。業務全般のオペレーションを任され、社業でも多忙を極める。

9月からは電気自動車の急速充電インフラ普及を推進する「チャデモ(CH AdeMO)協議会」の会長に就任。前任者(勝俣恒久東京電力会長)が原発事故対応を理由に投げ出した後を継ぎ、急速充電器の国際標準化にも挑む。二足どころか三足のわらじを履いてイバラの道をどう走破するのか、そのハンドルさばきが注目される。

(写真=AP/AFLO)