経済学者の着眼点
夏休みは自由な時間が多く、楽しいことが満載です。
この楽しい夏休みの最大の敵は、ズバリ「夏休みの宿題」です。
ドリル、読書感想文、自由研究と手ごわいメンツが並んでいます。これらの宿題をいつ片付けるかという点は、小中高生の大きな懸案事項だと言えるでしょう。
さて、夏休みの宿題という話題で多くの経済学者が気にするのが、夏休みの宿題を「いつ終わらせたのか」という点です。
「なんでそんなことを気にするの?」と疑問を持たれる方もいるかと思いますが、この点は我々の多くの行動に影響を及ぼす重要な要因と深い関連があります。
「将来を見越した行動」をとれるかどうか
実は「夏休みの宿題をいつ終わらせたのか」という点は、「将来を見越して今どれだけ我慢できるのか」という行動パターンと深い関連があるのです。
夏休みは約1カ月間であり、この期限内のどこかで必ず宿題を終わらせなければなりません。つまり、「やらなければならないタスクをいつ消化するのか」という問題です。
これにはいくつかのパターンが考えられます。例えば、夏休みが始まったらできる限り遊んで、面倒な宿題は後回しにするというものです。この場合、夏休みの終わりの方に必死になって宿題をやらなければならず、大変な目にあうことが予想されます。これと対照的なのは夏休みが始まったらすぐに宿題を終わらせてしまうというものです。この場合、初めの方こそ大変でしょうが、宿題が終われば夏休みを満喫できます。
このように「夏休みの宿題をいつ終わらせたか」という問いは、期限内にやらなければならない仕事を「我慢して早めに終わらせるのか」それとも「とりあえず今を楽しんで後回しにするのか」のどちらに行動パターンが近いのかを判断する材料になります。
そして、「宿題を早めに終わらせる傾向が強い人」ほど、「他の場合でもより良い結果につながる行動をしやすい」ことがわかっているのです(※1)。
※1 池田新介(2006)「経済行動を左右する『時間割引率』」週刊エコノミスト, 2006年2月21日号, pp. 48-51及び池田新介(2012)『自滅する選択-先延ばしで後悔しないための新しい経済学-』東洋経済新報社.