「勉強するのが面倒くさい」ゲームにはまって不登校気味に
中学受験を経て入学した大阪教育大学附属池田中学校の定期テストの結果を見て、優斗さんは焦った。
「周りの子と比べて思ったより点数がとれなかったんですよ。どんなに頑張っても僕は上位に入ることはできなかった。だんだん『勉強するのがもう面倒くさい』と思うようになっていました」(優斗さん)
成績が伸びないと、やる気も失せる一方だった。心の穴を埋めたのがネットゲームだ。
中学に入ってから親に買ってもらったノートパソコンを開けば、楽しい世界が待っている。画面の中での対戦に夢中になり、寝る時間はどんどん遅くなっていた。そして学校に行かない日が増え、通っていた塾も休みがちになった。
ベッドに潜り込む頃、空はすっかり明るくなっていた。「学校に行かなあかんよ」という母親の声はスルーして眠り、目が覚めるのは夕方近くだ。お腹を満たしたらパソコンを立ち上げ、そのままゲームに没頭する。そして気づけば、再び、朝……。
昼夜逆転の生活を送る日が増えていった。中学2年生から徐々に欠席が増え、中学3年生になると学校に行くのは週2〜3日。不登校に近い状態だった。
「頑張って学校に行った日も授業中はほぼ寝てました。夜に起きているので昼間は単純に眠い」
「ああ、そう。家にいたいならいればいいやん」と見守る母
この状況に誰よりも胸を痛めていたのは母・紋子さんである。
「当時のことを考えると、中学で必死に喰らいついても結果が出なくて、しんどかったやろなと思います。『起きなさい』と布団をはがしたり、『途中からでも行きなさい』と、車で学校に送っていたときもありました。気持ちが後ろに向いているときに、ああせいこうせいと言っても無理なので、最終的には、学校を休むと言ってきたら『ああ、そう。家にいたいならいればいいやん』と見守っていました」
優斗さんに、唯一、約束させたのは定期試験を受けることだった。テストさえちゃんと受けていれば、次のステップにつなげられると考えたからだ。優斗さんが思い返して言う。
「授業をまともに受けてないので、結果はひどかったですね。特に英語がダメで、30点台ということもありました。『こんな点数を取ってしまった』と落ち込みましたが、それでやる気が起きるわけではない。クラスのなかでは完全に下のグループにいました」
優斗さんが通っていた学校は中高一貫校だが、内部進学には規定があった。高校に上がれるのは160人中120人。およそ1クラス分の生徒がふるい落とされてしまう。
成績は下から数えたほうが早く、出席日数は半分程度の優斗さんが上に行ける可能性は限りなくゼロに近い。ずるずると過ごし、附属高校に進学できないことが決定的になった。