※本稿は、ドラゴン桜「一発逆転」プロジェクト&東大カルペ・ディエム『ドラゴン桜「一発逆転」の育て方』(プレジデント社)の一部を再編集したものです。
「娘の教育のためなら売れるものはみんな売りました」
「教育は絶対に無駄になりません。学んで身についたことは泥棒でも盗むことができない。そう思っていたので、理子の教育のためなら売れるものはみんな売りました」
そう語るのは、東京大学理科二類1年生の神谷理子さんの母・裕子さんだ。
一人娘の理子さんには、幼少期からたくさんの本を読み聞かせし、いろいろなところに出かけ、動物が好きな娘のために乗馬体験をさせたり、釣りにいったり、弓道に興味を持てば弓道ができる場所を見つけて連れていくなど、理子さんがやりたいということはすべてさせた。そのことを理子さんは親に感謝している。
「それほど裕福な家ではないのに、私のやりたいと言ったことを母はやらせてくれた。獣医という夢を持つことになったのもそのおかげ。すごく感謝しています」
獣医志望の娘のために指輪や貴金属、バッグを売り、奨学金を借りた
神谷家の家計は決して余裕があるわけではなかった。それでも、裕子さんは娘にそれを悟られないようにしながら、指輪や貴金属、バッグなどを売ったり、奨学金を借りたり、パートで必死に働いたりして、習い事や学費、予備校代などの教育費を捻出していたという。
子供の可能性を信じ、経済的に余裕がなくても、経験には惜しみなく投資する。そしてその結果、理子さんは「獣医師になる」という夢を見つけ、その思いを強くしていった。
「獣医になりたいと思ったきっかけは幼稚園の頃、イルカのショーを見にいってからです。それ以来、水族館にイルカを見にいったり、イルカと触れ合うために沖縄旅行に連れていってもらったりしました。その他にも、乗馬をさせてもらったり、親と海や釣り堀で魚釣りをしました。特に、南アフリカに住んでいたときは、近くの国立自然公園で野生のライオンを見たり、自宅でヘビを飼ったりしたこともあります」
初めて経験するインタビューに緊張していた理子さんも、動物の話になると目をキラキラと輝かせる。
東大に入学後、さっそく体育会の馬術部に入り、それとは別に、狩人の会(資格取得して鹿やイノシシなどの猟をする)、釣友会という学内のサークルにも興味を示している。将来はイルカや馬などの大型動物を扱う獣医師になりたいと思っているそうだ。
「受験期も、勉強の合間に、獣医さんのブログを読んだり、動物の動画などを見たりして、エネルギーと癒やしをもらっていました」というだけに、獣医への夢が東大受験の大きな原動力になったことは間違いない。
しかし幼少期の将来の夢が、東大合格につながるとは、本人も家族も予想もしていなかっただろう。