健康で長生きをするにはどうすればいいのか。耳鼻咽喉科医の木村至信さんは「耳は『人を動かすエンジン』と言える大切な器官であり、耳の健康を保つことが大切だ。イヤホンを使うか、ヘッドホンを使うかで耳の未来が変わってくる」という――。

※本稿は、木村至信『1万人の耳の悩みを解決した医師が教える 耳鳴りと難聴のリセット法』(アスコム)の一部を抜粋・編集したものです。

イヤホンで音楽を聴く女性
写真=iStock.com/west
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「耳だって疲れている」ことを知ってほしい

目を酷使していると「目が疲れた」という実感があるでしょう。「疲れ目」という言葉もありますよね。けれども、耳を酷使していると「耳が疲れる」ということを、多くの人は知りません。「疲れ耳」という言葉は使いません。

ですが、目のように閉じることができない耳だからこそ、「耳だって疲れる」。耳の疲れは「聞こえ方」に大きく影響します。耳の老化を早め、耳鳴りの原因にもなります。

もしかしたら「耳を酷使している」という自覚はないかもしれません。けれども、リモート会議に参加するために、あるいは音楽を聴くために、イヤホンを長時間着けっぱなしにしている人は、耳を疲れさせています。

しょっちゅうカラオケに行く人の耳も疲れています。どうか、耳が疲れ過ぎないようにいたわってあげてください。耳が疲れていると、若い人でも耳が遠くなったり、耳鳴りに悩まされたりする危険があります。

音にさらされ続けると「疲れ耳」になる

絶えず大きな音の中で生活していると、耳は疲れます。大音量の音はもちろんですが、軽い音楽でもずっと聞いていれば疲れます。

音楽を大音量で流している店や工事現場に勤めていたりすると、長時間大きな音にさらされることになります。

こういう状態を「騒音曝露そうおんばくろ」といい、耳には大きな負担をかけます。不快に感じるような汚い音でも、音量が小さければ問題ありません。逆に、どんなにきれいな音でも、音量が大きければ、耳にとっては騒音です。

実は、同じ家に難聴の人がいると、家族が騒音曝露になることがあります。難聴の人との会話では必然的に声が大きくなり、一緒に見ているテレビの音も大きくなります。そういう中でずっと暮らしていると、長年の蓄積で「騒音曝露」になるのです。