※本稿は、木村至信『1万人の耳の悩みを解決した医師が教える 耳鳴りと難聴のリセット法』(アスコム)の一部を抜粋・編集したものです。
耳掃除を毎日する習慣を一度やめてみる
耳掃除は「気持ちいい」ですよね。耳掃除が気持ちいいのは、耳の穴には快感を生じさせる迷走神経が走っていて、耳かきで触れば触るほど気持ちがよくなるからです。
でも、気持ちいいからといって、耳掃除はやたらにするものではありません。やり過ぎると「外耳道炎」になる恐れがあります。外耳とは、耳の入り口から鼓膜までの通路のこと。空気の通り道です。
外耳道炎になると、皮膚がめくれ、細菌や真菌が入り、耳だれが出たり、中が腫れて難聴を起こすこともあります。
さらに、外耳道炎を繰り返して、治療のための抗生剤を長く続けて使うと、耐性菌が棲みつき、「難治性の外耳道炎」、カビが生える「外耳道真菌症」など、深刻な症状に進むこともあります。
たかが耳掃除のことで、ちょっと脅かしすぎてしまったかもしれません。けれども、耳は、とても大事な器官。毎日、耳掃除をする習慣がある人は、一度やめてみましょう。
医学的に正しい耳掃除のやり方
・お風呂上がりに、耳の入り口から1センチのところまで
・「綿棒」を使う
これが、医学的に「正しい耳掃除」の基本です。
耳の入り口から1センチの範囲には、耳垢の元になる脂を分泌する耳垢腺があります。ですから、掃除は耳の入り口から1センチの範囲だけです。
耳の入り口から鼓膜までの長さは約3センチ。奥は皮膚が薄く、毛も生えず、皮脂腺も耳垢腺もないので、耳掃除は必要ありません。それどころか、突き当たりにある鼓膜付近には知覚神経が走っていますから、触ると激痛がすることもあります。
日本人の約6割は耳垢腺が少なく、耳垢はカサカサとしています。残りの4割の人の耳垢は、欧米人のようにベトベトしています。一般的な「耳かき棒」が有効なのは、カサカサタイプだけです。
ですが、耳かき棒は耳を傷つける危険があるので、「綿棒」を使うほうがベターです。ベトベトした耳垢を取るには綿棒で拭き取るか、耳鼻科で処置してもらう以外ありません。
ちなみに、昔は「日本人はカサカサタイプが9割」といわれていましたが、近年、食生活やライフスタイルの変化とともに耳垢も欧米化してきています。