なお、耳を疲弊させるのは「騒音」ですが、耳が疲れる原因には「血流不足」もあります。血流が大事なのは、疲れた細胞をリセットする栄養素を血液が運んでくれるからですが、血流が悪いと聞こえの神経細胞がリセットされずに疲弊していきます。

夜、お風呂でゆっくり耳を温めたり耳マッサージをしたりするのは、疲れた耳を休ませる効果もあります。

耳をビックリさせない

朝、音楽を聴くとき、大音量はNGです。耳の神経がビックリするからです。耳にも準備運動が必要なのです。

ついでに、目覚まし時計の話もしておきます。難聴になると、目覚まし時計の音も聞こえなくなるので、朝、起きられなくなります。だからといって大音量の目覚まし時計を購入する必要はありません。実は「爆音で起きる」というのは人間にとっては不快なことで、睡眠の質を下げるといわれています。

今は「光目覚まし時計」という、起床時刻の少し前からライトが少しずつ光り、起床時刻に明るい光で顔を照らして起こしてくれる時計があります。音の目覚まし時計と併用するのもいいでしょう。音+振動式もいいと思います。

「イヤホン」か「ヘッドホン」かで耳の未来が決まる

最近は、多くの人が家の中でも外でも使っているのがイヤホンやヘッドホンです。とても便利ですが、長時間ずっと使うことは「疲れ耳」の原因になります。

特に流行の「ワイヤレスイヤホン」や「ゲーミングイヤホン」は耳のかなり奥まで入るだけでなく、耳を密封して空気を通さないので、あまりよくないのです。

どうしてもイヤホンが必要なら、耳に入れるゴムの部分が柔らかく、外耳道を傷つけないものを選んでください。ただし、ゴムアレルギーのある人は、素材を確認して使ってください。

また、音量を下げて使えるノイズキャンセリングイヤホンのほうが比較的、安心です。逆に、ハイレゾ対応イヤホンは避けてください。

できればイヤホンではなく、ヘッドホンを使ってください。密閉性でないタイプが望ましいです。耳を塞がない「骨伝導ヘッドホン」や「ネックスピーカー」もいいでしょう。大谷翔平選手が使っていることで話題になったノイズキャンセリングのヘッドホンなら言うことはないでしょう。

イヤホンを使うときには、音の大きさに気をつけてください。何より、1回1時間以内と決めて、耳を休ませることが大切です。

ソファに座ってヘッドホンで音楽を聴く男性
写真=iStock.com/AsiaVision
※写真はイメージです

イヤホンが耳の「空ぶかし」をしている

人の身体を、自動車にたとえてみましょう。車のエンジンは、人間ならどこに当たると思いますか。あなたはおそらく「心臓」だと答えるでしょう。もちろん、それは正しい。でも私は、つねづね「人を動かすエンジンは耳」だと言っています。

音が聞こえることで、人は何かの行動を起こします。応答したり、外へ出ていったり、動いたりします。つまり、「聞こえてくる音」が、人を突き動かす原動力になるのです。