地に堕ちた中学時代、高校でいかに復活し東大に逆転合格できたのか

附属高校に入れなかった優斗さんが通い始めたのは大阪の箕面自由学園高校だ。優斗さんが小学生のときに通っていたのが箕面自由学園の小学校だったこともあり安心感があった。探してきたのは紋子さんだ。

「いわゆる進学校ではないけれど、学校の様子をわかっているし、何より家から近かったから朝も遅くまで寝ていられる。優斗に箕面自由学園の名前を告げたら素直に『いいよ』って。反発するやろなと構えていたので、拍子抜けするぐらいでした」(紋子さん)

もっとも、親に言われるがままに進路を決めたわけではなく、優斗さんなりに考えた上での結論だった。

決め手になったのは、スーパー特進コースの存在だ。難関大学を目指すためのカリキュラムが綿密に組まれ、大学受験に向けてはそれにのっかるだけで済む。予備校の選定など自主的に受験体制を整えなければならない公立高校よりも効率がいいと考えた。

なぜそのように勉強への気持ちを切り替えられたのか。

中村優斗さん
写真=本人提供

聞けば、優斗さんには小さい頃からの夢があった。パイロットになることだ。好きな航空会社はANA。大空を駆け回る飛行機に憧れ、操縦かんを握ってみたいとずっと思ってきた。

「中学はさんざんサボったし、勉強をしない生活は中学までで一度リセットしよう。高校からは勉強がんばらんと、って思っていました。中学の頃は大学受験がまだ遠く、スイッチが入らなかったけれど、高校生になったらもうのんびりはしていられない。ここで置いていかれたら終わりだという危機感もあって、ようやく勉強に向き合う気持ちになれたんです」(優斗さん)

そんな気持ちの変化には、両親の考えも影響していた。

「大学はいわば人生の第1のゴール。自分がやりたいことをかなえられる大学に行ってほしい。夢をかなえるための大学に入れれば、そこに至るまでの道のりはどんな道だって構わない」

ことあるごとにそう伝えてきたのである。

「パイロットになって操縦かんを握る」わが子の夢を応援

昔に比べて、学歴社会の傾向は薄らいできたとはいえ、特定の業種には、有名大学を卒業したほうが就きやすい。パイロットもその一つだ。パイロットになるためには大学進学は欠かせないステップ。大手航空会社の自社養成の場合、4年制大学以上の学歴は必須で、難関大学からの採用が多いという。航空大学校への進学も4年制以上の大学に2年以上在学して単位を取る必要がある。

物心ついたときから飛行機が大好きで、空港にも何度も家族で足を運んだ。滑走路に離着陸する飛行機を食い入るように見つめる姿を知っているからこそ紋子さんは、夢をかなえるには大学が大事だということをくり返してきたのだ。

高校生になった優斗さんの生活は、紋子さんから見るとそれまでとは別人のようだった。

「一番大きな変化は、毎日、朝起きて学校に行くようになったことです」

授業前の朝学習があるので、7時30分には学校につくように登校していたというのである。優斗さんによると家では相変わらずパソコンに向かいゲームをしていたが、学校のカリキュラムが放課後までみっちり組まれていて、帰宅する時間が遅いので以前よりも時間が減った。