「きっかけは英文法だった」勉強がわかるようになって、やる気継続

何かをきっかけに心機一転頑張ろうと思っても、その思いを長くキープできない人は山ほどいる。優斗さんはなぜ高校から頑張ろうという気持ちが持続したのか。

一つは勉強がわかるようになり、楽しみを感じるようになったこと。高校入学直後、苦手だった英語の授業でハッとしたことがあった。

「英語の文法で、名詞とか副詞とか品詞を意識して読むことを初めて知ったんです。『こうすれば意味がわかるんだ!』という驚きがあったんですね。わかりやすく教えてくれた先生に付いていきたいと思いました」

「君たちは勉強部に入ったと思え」教師や級友の刺激で東大志望に

もう一つは、クラスメートの存在だ。優斗さんのスーパー特進コースは、進学のためのカリキュラムがビッシリ組まれていた。7時限目の後は19時すぎまで自習時間。一般の部活動への入部は認められず、「君たちは勉強部に入ったと思え」と担任から言い渡されるほどだった。

「あいつはすごい。しっかりしてて、人間ができてる。おれもちゃんとしないと」

高校1年生の優斗さんは同じ特進コースのクラスメートを見て、そう思った。

「自分は課題があっても期限ぎりぎりにあわててやるタイプ。面倒だし、自分はそれでいいとずっと思ってきました。高校でできた新しい友達が、先を見て行動する子だった。京都大学を目指していて成績もいい。LINEでやりとりしていて『あの課題やった?』みたいな話になったときに、向こうはとっくに済ませ、自分はまったく手をつけていない状況が多くて恥ずかしくなったんです」

中学のときもそうした子はいたのかもしれないが、気になることはなかった。高校生になり、優斗さんが将来に向けて頑張ろうという覚悟ができたからこそ、頑張っているクラスメートがまぶしく見えたのかもしれない。勉強に対する姿勢が変わっていった。

©︎Norifusa Mita/Cork

そして優斗さんの「第1のゴール」が東大になったのは、高校1年生の初冬だった。成績や勉強に向かう姿勢を見ていた教師が、「東大を目指してみないか」と提案してきたのである。一発逆転のギアが入った瞬間だった。

「東大のことを調べてみたら、僕が学びたい航空系の学科があるし、日本で一番の大学だから目指してみたいと思いました。それに、通っていた高校から東大合格者はまだ一人も出ていなかったので、初の東大生になって偉そうな顔をしてやろうとも目論んでました(笑)」(優斗さん)