グーグルで、日本人として最も出世した男性がいる。グーグル日本法人社長・米本社副社長を務めた村上憲郎さんは「私のキャリアを眺め、多くの方が私のことを『ツキの村上』と呼ぶ。幸運だったのは確かだが、出世できた理由はそれだけではない」という――。

※本稿は、村上憲郎『クオンタム思考 テクノロジーとビジネスの未来に先回りする新しい思考法』(日経BP)の一部を再編集したものです。

ロンドン・キングスクロスにあるグーグルの英国本社ビル
写真=iStock.com/William Barton
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「研究所の先生」と話を合わせるために知識が必要だった

私は大学卒業とともに日立電子へ、ミニコンピュータのシステムエンジニアとして入社しました。日立電子での仕事内容を手短に説明すると、さまざまな研究所にお邪魔し、そこの先生が研究されている内容をお聞きして、「先生たちの研究はここをコンピュータで自動化することができますよ」という提案をするといったものでした。

研究分野は医学や物理など多岐にわたり、私は、先生方の専門分野の知識をそれなりに習得する必要がありました。知識がなければ、研究所の先生と話を合わせることができません。知識不足のまま提案しても、的はずれな提案として、競合他社に負けるだけです。

まずは先生方がどのような研究に打ち込み、どのような成果を出そうとしているのかを、知る必要があったのです。

そのため私は、会社のあったJR中央線武蔵小金井駅近くの書店へ、研究所の先生方を訪問した帰りに立ち寄り、その日に聞いた専門分野について書かれている本をあさっていました。

分厚い本格的な専門書はあえて避け、字が大きくてイラストが多くて、なおかつ全体がぼんやりとでもつかめる程度のなるべく薄い本を買い、知識を身につけていきました。字が大きくてイラストが多い本ですから、せいぜい1時間ほどの熟読で済ませられます。

私は「一知半解いっちはんかい」と呼んでいたのですが、細かいところはわからないままにし、わかるところだけ解読することに専念しました。