日本で進む幸福度の二極化
『99.9%は幸せの素人』(KADOKAWA)の共著者である、幸福学の第一人者・前野隆司慶應義塾大学大学院教授を中心に行った「あなたの幸福度はコロナによってどう変わりましたか?」という調査があります(2020年5月)。日本で初めて、新型コロナウイルスによる緊急事態宣言が発令された時期に行われたものですが、その結果は驚くべきものでした(図表1参照)。
多くの人たちが、新型コロナウイルスの影響で生活形態が変化し、さまざまな制限を強いられました。そのため、「幸福度は下がっているだろう」というのが大方の予想でした。
ところが、未知のウイルスとの戦いで大きなストレスを感じている最中にあっても、幸福度が「上がった」と答えた人が42.5%もいました。その一方で、「変わらない」「下がった」人を合わせると57.5%という結果が出ました。
社会・経済活動がストップし、ほとんどの人が下がってもおかしくない状況下にあって、なお幸福度が上がる層、一方で横ばいか下がる層……この調査から、コロナ禍において日本人の幸福度の二極化が進んでいることが明らかになったといえます。
「コロナが人類の幸福度に与えた影響は限定的」は本当か
新型コロナウイルスと幸福度の関係性、また、日本国内での幸福度格差──この2つの点で、もう1つ注目すべきレポートがあります。それが、毎年国連から発表される「World happiness Report」です。
毎年3月に発表される世界幸福度ランキングなど、人類の幸福度についての報告がされる同レポートの最新版「World happiness Report 2021」では、「新型コロナウイルスは人々の幸福度に思ったほど大きな影響を与えなかった」とし、「驚くべきことに、平均として幸福度が低下していなかった」とまとめているのです。
事実、最新版の世界幸福度ランキングでは、先進国中最下位ではあるものの、日本も前年の60位からわずかながら上昇して56位になっています(「『世界56位』日本が幸福度ランキングで毎年惨敗する根本原因」参照)。
では、世界的にも幸福度に対する新型コロナウイルスの影響は大きくなく、かつ、国レベルでは日本の幸福度ランキングがやや上昇しているにもかかわらず、なぜ、国内では幸福度格差が進んでいるのでしょうか?
そこには、「数値だけではわからない深刻な問題」があります。