この本のなかにも「わからないことがあったら現場の人に聞け」とあるけれど、まったくその通りです。机上で考えるのではなく、出かけて行って患者さんや健康不安を持ってる人の話を聞く、そして、ドクターからも話を聞く、学会に行く……。僕らはそればかりやっている。でも、その態度を失ってしまったらもう何も新しいことは作れない。

これは人にやりがいを与えるしくみだ

——機能的にはプログラムができたとして、でも、使う側にしてみたら、現場の感覚が入ってないものは信頼できません。

【松浦】結果的にはやはり情報収集なんですけれど、それはネットで集めてくるものではない。やっぱり手を汚す、手で触ることなんです。アイデアにつながる情報とはバーチャルなものではなく、自分が経験した、自分が手で触ったものがどれだけあるかということなんです。把握の先にある熟知。それが成功の秘訣じゃないのかな。

——リーダー、経営者もそうですが、現場の人もなんとなくわかったつもりにならずに、あれっ、これもしかしたらこんなふうにできるかもって考える人が一人二人と増えていったら、企業が、日本が変わる気がしています。

【松浦】変わりますよ。だからたぶんトヨタの工場って、何事かに熟知した詳しい人だらけなんでしょうね。そして、詳しい人には誰も勝てないんです。社長でさえも。

僕はこの本を読んでほんとうによかった。僕の幼なじみが大変な状況にあっても、トヨタ生産方式に取り組んでがんばってくれてるというのもすごくうれしい。人にやりがいを与えるしくみということなのだから。

ここに書いてあることは「俺には無理」じゃないんです。「あ、俺にもできるぞ」ということなんです。だから、トヨタ生産方式は世界中で共有できたんです。誰でもできる。それを知ることが、やろうという気分につながるし、元気になりました。読後感のいい本でした。

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