そして、やっぱり大野(耐一)さんはすごいなと思いました。大野さんは何事に対しても肯定的に理解しようとしている。どんな人に対しても、どんな意見にも、どんな出来事にも全肯定なんですよ。そこが強い。

僕らはどうしても抵抗したくなる。抵抗してから受け入れたりする。でも、大野さんは全肯定の生き方です。何が起きてもいったんそれは受け入れて、抵抗せずに、では、どうしようかと考える。その心持ちや生き方にはものすごく感動します。

指導に対してもあきらめがないでしょう。あきらめを持とうとしない。

成功の反対は「失敗」ではない

——終わりがない。

【松浦】終わりがないんです、ずーっと終わりがない。でも、経営ってそういうもんじゃないですか。人に対しても事業に対しても、あきらめないし、終わりがない。そう、あきらめないということを会社のある種の社風にしたことは、ほんとうに日本人として誇れる企業だと思いますよね。

——大野さんは失敗をとがめだてしません。

【松浦】ええ、大野さんは寄り添うリーダーですね。失敗をするからやめろとは言わない。とにかくいろんなことを経験させる。社員はみんな経験不足なんです。

——小さな失敗をたくさんさせてあげるって大事なことですね。

【松浦】大事ですよ。人間が成長していくタネになりますからね、失敗というのは。

僕には好きな言葉があります。アメリカへ行ったとき、ある友人から言われた言葉ですが、「成功の反対は失敗じゃない。成功の反対は何もしないことだ」と。

ショックでしたよ。なるほど、成功の反対というのは何もしなかったことなんだ、と。何もしないということは価値がないんだ。それは要するに経験をしろということでしょう。

失敗は学びですから、非常に価値があるんです。それに比べて、無関心は良くない。今、無関心な人が多いんじゃないかな。自分のことにだけ関心を持って、周り、環境、会社、横で起きてること、後ろで起きてることを少しも見ようとしない。失敗しようとしない。

でも、社会に対する関心を持たないと自分の仕事のモチベーションにはなりません。自分に関係ないことなんてこの世の中にないんです。地球の裏側で起きていることだって自分に関係している。もっと関心を持って、それを自分の手で触りに行こうよという態度が大事なんです。