ノンフィクション作家の野地秩嘉さんは、『トヨタ物語』(日経BP)の取材で、工場を取材し、他社との違いに驚かされたという。どんな点が違ったのか。FMヨコハマのラジオ番組「FUTURESCAPE」で行われた放送作家の小山薫堂さん、パーソナリティーの柳井麻希さんとのやりとりをお届けしよう――。

※本稿は、野地秩嘉さんのnote「小山薫堂さんが読み解く「トヨタの強さ」|『トヨタ物語』続編執筆にあたって 第12回」の一部を再編集したものです。完全版はこちら

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工場に足を運び続け70回

【柳井】今日は『トヨタ物語』の著者、ノンフィクション作家の野地秩嘉さんをお迎えしました。

【小山】これまで野地さんが書いたものはどれも抜群におもしろいんですよ。僕が『キャンティ物語』という野地さんが書かれたものをドラマにさせていただいたのが、もう10年以上前ですかね(2004年「あの日にかえりたい。~東京キャンティ物語~」)。ですから、本を書かれたのはもうちょっと前だったと思うんですけど。

【野地】1994年です。

【小山】野地さんを見ていると、あんまり忙しそうじゃなくて、ゴルフばっかりしている印象がありますけれど、いったい、いつ取材しているんですか。だって、この『トヨタ物語』は、70回も工場に行かれてるんですよね。

【野地】そうなんですよ、70回。トヨタだけじゃなくその他の自動車会社も見に行きました。書く時はあまり考えてません。大したことないんです。調べたことをただ書いてるだけですから。

【小山】野地さんは調べているものを書いてるだけとおっしゃいますけど、読んでいると、野地さんという主人公が旅をしている私小説のようにいつも感じるんです。

【野地】鋭い(笑)。

【小山】影武者となって物語を書いてるだけじゃなく、本のなかに野地さんがいるんですよ。そして、もうひとつ、思うのはこの物語、ドラマにしやすいんです。

カローラ、アルファード…の後ろにパトカー

【野地】ありがとうございます。ドラマにしやすいのはトヨタの工場がとても面白かったからなのでは。トヨタの工場はミュージアムみたいでした。工場の照明が他社とは全然違って、手元が見やすい、明るい照明でした。それに見学路から作業者を眺めるのも見やすかった。現場を見ながら、書くことをずっと考えてました。

【小山】他にも他社の工場と違うところはありましたか。

【野地】トヨタの工場がほかの工場と違うところっていくつかあります。僕らの頭のなかにある工場の風景とは同じクルマ、黄色なら黄色いクルマが続々と出てくるというイメージです。でも、トヨタの工場にはそういうことはない。カローラの後ろにアルファードが流れてきたり、車種も色も違う。

そして、後ろにパトカーが流れてきたりするんですよ。2、3台後にはタクシーが流れてくる。すごいことをやってるんだなとひと目でわかる。部品だって、車種が違えば変わるわけですから。

【小山】確かに作業する人が戸惑いますよね、クルマが違うと。