クレイジーケンバンドの横山剣さんは、これまで40台以上を乗り換えてきた大のクルマ好きだ。そんな横山さんは『トヨタ物語』(日経BP)を読んで、「これはミュージックビジネスのバイブルだ」と感じたという。その理由を、ノンフィクション作家の野地秩嘉氏が聞いた――。(前編/全2回)

※本稿は、野地秩嘉さんのnote「クレイジーケンバンド横山剣さんが読み解く「トヨタの強さ」|『トヨタ物語』続編執筆にあたって 第10回」の一部を再編集したものです。完全版はこちら

横山剣:1960年生まれ。1997年クレイジーケンバンド(CKB)を発足し、ヒット曲多数。2020年にニューアルバム「NOW」をリリース。トヨタ自動車Global Newsroomにて「カーレース入門~Let's go to the Circuit!」が連載中。
撮影=尾関祐治
横山剣:1960年生まれ。1997年クレイジーケンバンド(CKB)を発足し、ヒット曲多数。2020年にニューアルバム「NOW」をリリース。トヨタ自動車Global Newsroomにて「カーレース入門~Let's go to the Circuit!」が連載中。

僕のミュージックビジネスのバイブルです

【野地】ライブやレコーディングで忙しい中、『トヨタ物語』をお読みいただいて、すみません。

【横山】届いた本が分厚くてびっくりしましたけど(笑)、読み始めたら面白くて、もう一気に。そのあとも持ち歩いてまた途中から読んだりとかいろんな読み方をして。読むたびに味わい深くて、ほんとに。

僕はクルマが大好きでトヨタ車にも何台も乗ってきて、いろいろ知っているつもりでいましたけど、創業からずっと続いてきたモノ作りへのこだわりとか、それを支えたトヨタ生産方式とか。この本を読んで、そのスゴさがよく分かりました。

いいものを作ろう、もっといいものを作ろうと、いつも考え続けて妥協しないとか、昨日より今日、今日より明日とカイゼンをずっとし続けることとか。これ、そのまま曲作りにも、ライブの構成を考えることなんかにも通じるんですよね。もうこの本は、僕のミュージックビジネスのバイブルになりました。

【野地】嬉しいお言葉です。横山さんのクルマ好きは有名で、楽曲にもいろいろ登場しますね。「シャリマール」にはサニー、カローラ、ファミリア、スタンザ、「透明高速」のシボレー、「GT」「血の色のスパイダー」、「中古車」にはメーカー名がズラリ。横山さんとクルマ、切っても切れない関係ですが、トヨタというと……。

2番目のお父さんがなんと…

【横山】父親がトヨタ東京パブリカ(後のトヨタ東京カローラ)の芝営業所、東京タワーの真下にあるんですけど、そこの勤め人だったんです。

【野地】ん? 横山さんのお父上は確かファッション関係の……。

【横山】あ、それは父親パートワン、ソニア・リキエル東京ブティックを経営していたんですけど。父親パートツーがトヨタ東京パブリカにいて、で、その2番目のお父さんが「君のパパになってもいい?」って言ってくれて、やったぁと(笑)。

【野地】トヨタとそんなご縁が(笑)。

【横山】その父親がけっこうモータースポーツ系にも縁があって、知り合いにトヨタ関係のレーサーの人がいたりして。そう、トヨタのレースと言えば、赤塚不二夫さんがスポンサーをしていた「Team Zeny」というレーシングチームが。

【野地】え、そんなのあったんですか。あの漫画家の。