タバコを吸っていた人間に後ろから…

【野地】大野さんには、おもしろい話があるんです。大野さんはこわいので有名な人で、現場はみんなビリビリしていた。あるときに、現場でタバコを吸っている人間がいた。上司が「大野さんが来たら雷が落ちるぞ。早くタバコを消せ」と怒ったら、後ろに大野さんがいた(笑)。

怒られると思ったら、大野さんは言った。

「いいじゃないか。タバコの1本ぐらい。タバコを吸いながら仕事をするのが俺たちの理想だろ」

【小山】たぶんそのイズムが今も受け継がれてるから、その作業者の方はふてぶてしくなってるんですね(笑)。

【野地】でも、ふてぶてしいって、僕はいい言葉だなと思ってます。ビジネスマンにとっては。

【小山】まあ、誇りがあるとか、自分の中に自信があったりっていうことなんでしょうね、ふてぶてしいというのは。

【野地】小山さんもね、そういう印象を時々受ける(笑)。

【小山】そうですか(笑)。そんなことないですよ。

【柳井】ほめ言葉ですね(笑)。

【小山】いやいや、僕はもう常に謙虚に、人々の意見に従うようにしておりますけれども(笑)。

【柳井】それと自信があるのとはまた別じゃないですか、誇りを持ってるという。

ZARAが取り入れたトヨタ生産方式

【野地】それで、トヨタ生産方式って、多くの人がすごい難しいものだと思ってるけれど、ふたつの例を挙げます。トヨタ生産方式を研究すると、自分の仕事にプラスになるという例です。

ZARAってファストファッションの会社(インディテックス)がありますね。創業者が一番研究したのがトヨタ生産方式だった。在庫をなくして売ろうと思ったわけです。

洋服っていっぱい作って、サイズもいっぱい揃えて、売れないのは全部セールにまわして、それでも売れ残る。在庫があるから儲からない。そこで、ZARAは売り切りにした。トヨタ生産方式を勉強して、新しい業態を作ったわけです。これトヨタの人も知らないでしょう。

【柳井】たしかに。ZARAはどんどん商品が変わっていきますね。2週間ごとに変わってる。だから前に売ってたやつを見に行くともうない。次のデザインのものが出ていたりする。

【小山】そう、もう今すぐ買わないとなくなるよ、みたいな。

【野地】在庫って悪なんです。在庫を持つと倉庫が要る。倉庫を作ると倉庫を管理する人がいる。半年に1回は帳面を付けたりする。帳面付けるって古いけど(笑)。そういうコストが洋服に乗っかるわけなんですよ、普通は。そうじゃないのがZARA。