前年1位のプリウスを上回る勢い
トヨタ自動車が2019月10月に発表し、翌年2月に発売したコンパクトカー「ヤリス」の評価が高い。日本自動車販売協会連合会が発表した、軽自動車を除く乗用車の2020年の登録台数は15万1766台で、実売が11カ月間だったにもかかわらず乗用車第1位の座を獲得した。
ちなみに2019年の年間登録台数のトップは同じトヨタの「プリウス」で、12万5587台だった。コロナ禍にもかかわらず数を伸ばしたわけで、ヤリスの勢いを感じる。
ヤリスは日本とともに欧州を主要マーケットとして開発された車種である。その欧州でも販売は好調で、2021年1月はすべての乗用車でトップになった。
逆にこれまで欧州の乗用車でトップになることが多かったフォルクスワーゲン(VW)「ゴルフ」は、現地では2019年にモデルチェンジを実施しているが、同じVWから電気自動車(EV)の「ID.3」が導入されたこともあり、かつてのような支持は得られず、続く2月はフランスのプジョー「208」がトップになっている。
ただし日本での登録台数については、少し注釈が必要だ。ヤリスにはハッチバックのほか、SUVの「ヤリスクロス」、スポーツモデルの「GRヤリス」があり、最初に挙げた統計はこの3車種の合算になっているからである。
ヴィッツよりも有利な販売のやり方
GRヤリスは3ドアしかないうえに、走行性能を向上させるために全幅がかなり広く、ハッチバックのヤリスと同じパワートレインを積んだ廉価版も存在するものの、上級グレードではマニュアルトランスミッションで、しかも400万円級の高価格車である。生産工程も手作りに近く、販売台数は期待できない。
一方、ヤリスクロスはハッチバックよりややボディサイズが大きいものの、コンパクトなSUVだ。価格や燃費についてもさほど差がないことから、具体的な数字は出ていないものの、2020年8月の発売以来かなりの販売台数を稼いでいる。
つまりヤリスの登録台数は、本田技研工業(ホンダ)で言えば「フィット」と「ヴェゼル」、日産自動車では「ノート」と「キックス」の合算に通じるものであり、それが大きく数字を伸ばした理由であると指摘する専門家もいる。
しかもヤリスは、日本では「ヴィッツ」に代わるモデルであった。ヴィッツもそれなりに売れていたが、同車はトヨタが持っていた4チャンネルの販売ネットワークのうち、ネッツ店の専売車種であり続けてきた。一方のヤリスは、当初から全チャンネルでの販売としており、販売面で有利だったことは間違いない。