兄弟で話す場面もあったが…

王室ウォッチャーたちは、葬儀を通してハリー王子の一挙一動を追った。フィリップ殿下の棺を載せた特別仕様車の後ろに続く葬列では、あえてハリー王子と兄のウィリアム王子との間に、従兄弟であるピーター・フィリップス氏を挟み込むという妙手を繰り出した。「2人を並べて歩かせて、過度にメディアの注目を浴びるのは望ましくない」とする女王の考え、という説もある。

葬儀が終わり、会場となったチャペルから引き上げる際、ようやく兄弟が言葉を交わす機会があった。ハリー王子は当初、ウィリアム王子の妻であるキャサリン妃とおしゃべりしていたが、やがて妃が一歩下がって兄弟水入らずの会話ができるよう演出した。こうした仕草により「ケイト妃(キャサリン妃の愛称)、兄弟間のピースメーカー(仲裁人)に」と英国各紙に評される形となった。

もっとも2人の会話は、読唇術による解析によると「良いお葬式だったね」程度のたわいもないおしゃべりだったそうだが、こうした機会の演出は、亡くなった殿下が生前訴えていた「兄弟和解への期待」を具現化する兆しとなったと喜ぶ向きもあったという。

ウィンザー城
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公務の人手が足りない王室の事情

2人の父であるチャールズ皇太子は、兄弟の関係改善を期待していたとも伝えられる。葬儀後、2人が話しているところを見て、「親子会議がしやすくなったのではないか?」と分析する王室ウォッチャーの声もある。

実際に葬儀終了後、皇太子と兄弟による3人の話し合いが行われたと伝えられた。ただ、一部報道では、チャールズ皇太子もウィリアム王子も「ハリー王子との一対一の面談は避けている。後で歪曲した形でマスコミに暴露される可能性が高いため」との分析もあった。

現在、王室が従事すべき公務はあまりにも多い。そうしたことから、皇太子は王室を離脱したハリー王子&メーガン妃夫妻にもその職務を一部負ってもらうかどうかを悩んでいた節がある。先に述べたように皇太子の弟、アンドリュー王子も現在王室公務には出られない立場にあることから「本来いるべき3人に王室の公務を任せられない」状況だ。

公務の多忙化を巡っては、フィリップ殿下が生前、2017年時点で高齢を理由に公務から退いた段階で問題が顕在化した。その際、殿下が関わった公務は他の王室メンバーに振り分けられたが、ハリー王子夫妻の離脱で事態がおかしくなった。

女王と共にロンドン市内でのイベントに参加したフィリップ殿下
女王と共にロンドン市内でのイベントに参加したフィリップ殿下=2017年6月、王室の許可を得て(筆者撮影)

女王はかつて、「命が続くかぎり大英帝国に奉仕する」と述べるなど生前譲位について明確に否定しているが、今年95歳を迎えている。今後公務への出席は激減、あるいはゼロにする可能性が高い。