王室の対応はそんなに甘くない
今回のフィリップ殿下の葬儀では、ハリー王子夫妻の「差別発言の暴露」もあって、英国だけでなく米国市民の間でも大きな関心を呼ぶこととなった。米ニュース専門チャンネルCNNでは、葬儀の一連の流れを数時間にわたって実況したが、その中継のさなか、「NETFLIXを通じて初めて英王室の存在を知った米国の若者たちが、葬儀の様子に注目しているかもしれない」といった興味深いコメントもあった。
米国人で「ロイヤル」の称号を持つのはメーガン妃だけだ。彼女がビジネス上の目的から称号に固執する意思は理解できなくもないが、王室の対応はそんなに甘いものではない。英国に飛んだ王子と自分たちの地位についてどのようなやりとりをしていたのかは知らないが、結局は、遠からず未来に「経費節減」という理由でその立場から切られることへとつながった。
不動のパワーバランスが変わるのか
殿下は死の間際まで、孫兄弟の和解を祈ったという。そんな温情さえも消し飛ぶほど悪化した王室との関係を、メーガン妃はどんな手を使って巻き返そうとするのだろうか。これ以上の醜態を目にしたくない、と思うのは筆者だけではないだろう。
王室は1人の人間に引っ掻き回されるほど、脆弱なものではない。しかし、殿下の死で消沈した女王が事実上隠居の道を選ぶ中、徐々に王室の求心力は落ちていく懸念がある。
CNNの名物キャスター、リチャード・クエスト氏は葬儀の中継で「英国王室自体は今後も維持されるだろう」としながらも、英連邦を構成するいくつかの国が女王を元首とする国体からの脱却を模索していることから、向こう数年で「英連邦になんらかの変化が生まれるかもしれない」との見解を披露した。
女王の戴冠から来年で70年。大英帝国の名残りともいえる王室は今、重大な転換機に差し掛かっている。図らずもフィリップ殿下の死は、そうした問題が露呈する機会となってしまったようだ。