ボーイングとエアバスの2社独占が崩れる恐れ
「あの機体を買うのはしばらく中国の航空会社だけでしょう。しかし、徐々にしっかりとしたメーカーになる。おそらく10年後までに、2社独占から3社独占になると思う」
世界の旅客機市場をボーイングと二分するメーカー、欧州エアバスのギヨーム・フォーリー最高経営責任者(CEO)は中国製ジェット旅客機「C919」の出来栄えを知り、米欧の未来を考えるフォーラムの席上、こうコメントした。
世界で広く使われているジェット旅客機市場は目下、ボーイングとエアバスの2社がほぼ独占している。しかしフォーリーCEOがこんな驚きのコメントを残すほどに、中国製ジェット機の実力は優秀なのか。客観的事実や資料とともに分析を図ることにしたい。
「ボーイングは中国でのシェアを失くすだろう」
上海で昨年12月9日、中国初の国産旅客機メーカー・中国商用飛機(COMAC)製「C919」型機が商業運航用の機体として、中国東方航空(CEA)へと引き渡された。CEAは、2023年春にも正式に路線投入する方針を固めており、“中国が作った飛行機“が人を乗せて空を飛ぶことになる。
フォーリーCEOが率いるエアバスは、180~200人乗りのナローボディ機(1本通路の機体のこと)のベストセラーともいえる「A320ファミリー」を量産している。2016年からは「A320neo(ニュー・エンジン・オプション)」という、環境にやさしいエンジンを搭載した改良モデルが飛び始めた。
さらに、航続距離を従来型の6500~7000kmから8600kmまで延ばした「A320XLR」も開発し、小さな機体ながら効率よく遠くへ飛ばすという航空会社にとってうれしい“高コスパ商品”を世に出した。
そんなフォーリーCEOが「C919は10年後までにエアバスA320neoの強力な競争相手になる」と主張するのだ。しかも、C919の登場で「ナローボディ機市場はエアバス、ボーイング、COMACの“三極化”に徐々に変貌する」との見通しも口にした。
米国の航空アナリストのひとりは、「COMAC製航空機が普及すれば、ボーイングは中国でのシェアを失う可能性があるのは必至」と指摘している。それほどまでにC919は将来が約束されているのか。