機体の組み立て技術はエアバス仕込み

気になる機体価格だが、現在公表されている“カタログ価格”によると、737MAX8は1億ドルをやや切る水準。一方、C919は約9500万ドルとあまり価格差はない。

メーカーのCOMACはC919について、「国際耐空規格に準拠し、独立した知的財産権を有している」「先進的な空力設計、推進システム、素材を採用し、低炭素化、高燃費を実現」と発表資料に記載している。“知的財産権は中国にある”としているのは、機体に装着する部品やシステムは中国側が設計あるいは選定した、との主張があるが、いずれにしても外国の技術を相当な部分で導入していることは間違いない。

とはいえ、中国は航空機組み立てに関しては高い技術を擁している。COMACは2008年エアバスと組み、欧州連合(EU)加盟国外で初めて天津に合弁工場を設立。エアバス天津として、2020年10月にA320ファミリーの機体を500機出荷した。一部の機体は、中国から日本の各空港へ国際線フライトとして乗り入れている。

香港国際空港のチェックインカウンターに並ぶマスクをした人々
写真=iStock.com/Derek Yung
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しばらくは中国国内での飛行のみ

同工場では今や、ワイドボディー機であるA330の組み立ても行っており、キャビンの設置、機体の塗装、製造飛行試験、顧客となる航空会社等の承認、機体引き渡しまでを行っている。

鳴り物入りで登場したC919だが、航空機が安全性と環境適合性の基準を満たしていることを示す「型式証明」は中国民用航空局(CAAC)のみから取得。平たくいうと、中国国内しか飛べず、日本など海外への乗り入れはできない。納入予定機数は「5年以内に年間150機」と言っているところからして、今のところは中国国内の受注残高に応えるのが精一杯だろう。

ただ、欧州航空安全機関(EASA)に証明申請を行っている動きがあるとされるほか、CAACとEASAとの間で一部証明を代用認証可能で合意しているとのニュースも流れている。目下のところEASAは中国との相互認証開始の時期について「コメントできない」と回答しているが、「痛くもない腹を探られたくない」という意思も働いているのか。