中国にできて、日本でなぜできない?

新型旅客機の生産、といえば日本人としては三菱重工が手がけた三菱スペースジェット(旧、三菱リージョナルジェット=MRJ)の事を思い出さずにはいられない。同機は、数十年にもわたって実現できずにいた国産旅客機の自主開発・生産を軌道に乗せるものとして、大きな期待をかけられていた。

生産プロジェクトは長期にわたり「凍結」されていたが、三菱重工業は2月7日、開発を取りやめ、撤退すると正式に発表。巨額の開発費を投じたが、継続しても採算の見通しは立たず、撤退に追い込まれる格好となった。

パリ航空ショーの舞台で、世界の航空業界関係者にお披露目された三菱スペースジェット(2019年6月)
筆者撮影
パリ航空ショーの舞台で、世界の航空業界関係者にお披露目された三菱スペースジェット(2019年6月)

当初、2013年には量産初号機がANAに納入される予定だったものの、合計6度にわたり延期。2017年のパリ航空ショーではANAとのコラボ塗装で登場したりした一幕もあったが、2020年10月以降は事実上の開発凍結状態にあった。パリで展示された機体もすでに解体済みだ。

凍結となったのには、さまざまな生産を進める中で不具合の調整や作り直しという局面も多かったとされるが、結局のところは「型式証明の取得」が極めて難しかった、という事情が大きいように思える。当初から米国の地方短距離路線への売り込みを前提に販売プランを組み立てていたことから、米国連邦航空局(FAA)の証明獲得は不可避だったわけで、そこへの見込みが立たなかったことが大きな敗因と見るべきだろう。

一方のC919だが、あえて欧米での証明取得にこだわらず、「中国国内のみで飛ばせば良い」と自国の航空市場の成長に期待を寄せた点において、三菱スペースジェットとは販売の姿勢が大きく異なる。

中国製航空機が日本の空を飛ぶ日は来るのか

では、こうした中国製の機体が日本の上空をブンブン飛ぶ日は来るのだろうか。

前述の通り、欧米航空当局が証明を出さない限り、国外である日本へと飛んでくることはあり得ない。

とはいえ、中国国内の航空会社に販売する一方で、水面下では国外に飛ばすための研究・開発は必ずや行っていると予想する。数年後のある時、中国の国内航空会社が、日本のどこかに突如飛ばしてくる可能性がゼロとは言えず、そういう意味では今後動向を気にかけておく必要がありそうだ。鉄道の世界では、中国が欧州への車両輸出もすでに実現しており、大型展示会でも実車の展示を行っている。

2023年夏には、あのMRJ(当時)が晴れ舞台を踏んだパリ航空ショーがある。もしや中国からC919の機体展示があったら、世界の航空界の話題をかっさらっていくことだろう。エアバスの幹部さえも恐れをなして見守っている中国航空界。予想できない何かを引き起こすかもしれない。

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