航空需要の「ど真ん中」に勝負を挑んできた

ナローボディ機はこれまで、米ボーイングが1万1000機、前述の欧州エアバスが1万機を生産。日本でもANA(全日本空輸)、JAL(日本航空)などのほか、格安航空会社(LCC)が全国津々浦々にある地方空港に飛ばすのに使っており、出張族にもレジャー旅客にも身近な機体といえる。

中国では2010年代に行われた予測として、2030年代までに合計7646機の民間旅客機と650機の民間貨物機が追加で必要となり、その大半をナローボディ機が占めると試算されている。C919の安定的な生産継続が可能になれば、これまで売れてきた欧米2社のシェアを食い荒らすことになる。

C919の登場で「末恐ろしい機体が出てきた」と世界の航空関係者は目下、恐怖におののいているといっても過言ではない。それは、世界の航空需要のいわゆる「ど真ん中」とされるマーケットにぶっ込むという勝負に挑んできたからだ。こうした使い勝手が良く、マーケットの存在も確約されている機体を、中国が自国生産に成功したことはどうあれ評価する必要がありそうだ。

各国の航空アナリストらは今、こぞってC919の仕様や、大手2社との比較を論じた記事を書いてはさまざまな媒体で発表している。

エンジンは米仏の合弁会社製を導入

インド拠点の航空ニュース配信サイト「Jetline Marvel」は、ボーイングの新鋭機「737MAX8」と、C919とを比較している。

ボーイング737自体は、単一モデルとしては歴史的に最も多く売れている機体だ。ただ最新型の737MAXは胴体の素材や翼の構造などから「実は違う型の機体では」と揶揄やゆされるほどに斬新な一方、これまでに2機が墜落。長期にわたって安全性の見直しを図るという事態に陥った。現在は当局の承認が下り、日本への乗り入れも再開している。

最大210席搭載できる737MAX8よりも、C919は標準仕様では160席前後と若干小さい。航続距離でみると、737MAX8は6570kmに達するが、C919は最長約5600kmにとどまる。したがって、A320neoファミリーよりも遠くに飛べない。

エンジンについては、目下のところ中国も国産品の開発は進めているものの、当初段階では、従来のジェット機でもよく使われている米仏合弁CFMインターナショナル製エンジンを導入した。なお、機体はCOMACが手がけたが、実際の機装品・システムのほとんどは、欧米と中国の合弁会社が製造している。

ユニークなのは、エコノミークラスの3列シートの真ん中の席が隣の席より1.5cm広くなっており、“より快適な座り心地を実現”としている。このアイデアは、新幹線の3列席の真ん中に当たるB席が若干広いというのと同じ考え方だ。

受注実績でみると、737MAX8は各国の航空会社から5800機以上を受注。また、A320neoは2022年末実績での受注数が8600機以上に達する。一方のC919は、中国国内の各社から1000機以上を受注している。