センバツ高校野球で準優勝した大分の明豊。監督の川崎絢平さんは異色の経歴を持つ。スポーツライターの清水岳志氏は「大卒後、スーパー店員やコンビニ店長をして人間観察力や人材を活かす能力を磨いた。その力が今大会で存分に発揮された」という――。
なぜセンバツ高校野球で「30代監督」がチームを決勝に導けたのか
2年ぶりに行われたセンバツ高校野球。4月1日の決勝戦は東海大相模(神奈川)がサヨナラ勝ちを収めて10年ぶり3回目の優勝を果たした。
惜しくも2対3で準優勝の明豊(大分)も5試合無失策と堅実な守備が光っていた。打撃もよく、大会ナンバーワンの呼び声高かった小園健太投手擁する市和歌山を撃破。昨秋の近畿地区優勝の智弁学園(奈良)に快勝し、こちらもプロ注目の剛腕・畔柳亨丞投手がいる中京大中京(愛知)をも破った。
決勝戦直後、監督の川崎絢平(39歳)の会見はその人柄がにじみ出ていた。
「悔しい、勝たせてやりたかったなぁ。(大会を通じて)打順を変えたりしたが、選手が与えられたポジションを全力でやろうと、起用に応えようという姿がうれしかった。自分たちのできる100%を出せたと思う。
(無失策について聞かれ)記録上はゼロですが、球際(の処理)だとか課題はまだある。そこに満足して終わると、これ以上は伸びないので、足りなかった部分をやり直したい」
30代にしてどこか人間としての厚みを感じさせる
これまでの甲子園取材で数えきれないほどの監督に触れてきたが、川崎は素朴で謙虚で温かい。インタビューではこうも付け加えた。
「コロナ禍で大会を開催していただいて、小さい子供たちに野球はいいなと思ってもらえればうれしい」
30代監督にしてどこか人間としての厚みを感じさせる川崎だが、その経歴は異色だ。野球一筋ではないのだ。