※本稿は、藤吉豊、小川真理子『「文章術のベストセラー100冊」のポイントを1冊にまとめてみた。』(日経BP)の一部を再編集したものです。
「シンプルに書く」とは、どういうことか
文章術の本100冊を精査した結果、もっとも多くの本に書かれていたのが、「文章はシンプルに」です。
「不要な言葉を省く」「簡潔に書く」「1文を短くする」「贅肉を落とす」「枝葉を切り取り幹だけを残す」など表現に違いはあるものの、「シンプルに書く」ことの大切さは、100冊中53冊に記されていました。
では、「シンプルに書く」とはどういうことでしょうか。53冊が伝えている内容を1文で要約すると、こうなります。
「なくても意味が通じる言葉を削る」
わかりやすい文章を書くには、無駄な言葉を使わず、簡潔に書くことが大切です。
投資家でビジネス書作家のムーギー・キムさんも、「小さなスマホの画面で文章を読むことが増え、情報がますます簡略化されるこの2020年代、少しでも長いと感じられたら、その文章はまず読まれない」(『世界トップエリートのコミュ力の基本』/PHP研究所)と指摘しています。
多くのプロも心掛けている2つの理由
文章のプロの多くが、「シンプルに書くこと」をすすめているのは、おもに2つの理由からです。
(1)内容が伝わりやすくなる
無駄のない文章は読み手の負担を減らし、内容の理解をうながします。情報や言葉を思い切って削ぎ落とすと、主語(誰が)と述語(どうした)が近づくので、事実関係がはっきりする。また、書き手の「短い文(文章)で正しく伝える」という意識が高まり、「もっとも適した言葉」を選ぶようになるため、書き手の主張がはっきりします。
(2)リズムが良くなる
1文を短くすると、「リズム感」が生まれます。ジャーナリストの池上彰さんは、「短い文章を重ねることで、リズムが良くなるし、緊迫感も出てくる」(『書く力』/朝日新聞出版)と、短文の効用を述べています。
文字数の多い文(文章)ほど、文体の乱れが起きたり、文章の流れが悪くなりがちです。したがって、削っても文章の意味が変わらない言葉は省略するのが基本です。