「僕はこう思う」と強く主張するときもあるけれど、基本的には待てる分は、いつまでも待つ。一見、じれったいところもあるけれど、それを貫くことで、社員は鍛えられ、考える力が強くなっていく。

「考えられる人」をひとりひとり増やしていく大切さ

待つことと放置は違います。本書でも、「大野さんは見守ってくれていた」と書いてありますが、待つだけでなく、つねに社員を気にかけて、見守っていなくてはならない。僕自身は経営者でありつつ、ファシリテーターの役割を意識をしていて、全然違う方向に行きそうになってくると、ちょっと整理して、立ち止まって、もう一度、考えてもらうようにしています。

そうやって、ちゃんと見てるよ、放置じゃなくてちゃんと見守っているから、安心して決めてごらんよ。最後にうまくいかなかったところに関しての責任は僕がとるからさ、と。

ビール調製用の装置
写真=iStock.com/ViktoriiaNovokhatska
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そういうやり方を実践していって、最初にひとり、しっかり自分で考えられる人を育てる。そんな「ひとり」がだんだん増えてきて、多数になってくると、文化になる。それが10年ぐらい続くと、誰が入ってきても、指示待ちではなく、自分たちで改善をしていく文化ができる。

まあそうは言ってもまだまだ全然できてないんですよ。できていないし、やっぱりトヨタと比べると、まだまだ僕らは甘いなと。トヨタは85年という長い間、ずっと改善している。自動車部門を作って、改善の文化を世界中に広げたのですから、すごいことですよ。徹底具合がやっぱりすごい。

巨大な相手に立ち向かうトヨタのベンチャー魂

そのほかにも注目したことはいっぱいありますけど、やっぱりベンチャー魂です。前にも言ったけれど、何百倍ものシェアを持つアメリカの自動車会社に挑戦するわけでしょう。

僕らヤッホーも今、何百倍ものシェアを持つ大手ビールメーカーを意識しながらやっているわけですから、豊田喜一郎さんの挑戦は心強いです。クラフトビールの世界では、僕らの「よなよなエール」が日本で一番売れています。「よなよな」を筆頭に新しいビール文化を作るんだと意気込んで、「何百倍」に立ち向かっている。

普通は何百倍の同業を相手にしても勝てないと思い込むものだろうけれど、うちが頑張ってビールのバラエティを増やすことで、日本のビール文化が変わっていく。ビール好きの人にとって楽しい日本にしていきたいんです。