認知されていない「クラフトビール」をどう売るか

最初はなんかワクワクしながら楽しんでやってましたけど、途中で売れなくなって、どん底になって、もう本当にくじけそうになって……。実際かなりの人がくじけて辞めていっちゃいましたけど……。そのうち何人かが残って最後までしぶとくやってきたから、今日がある。

僕は当初、普通の平社員でした。社長は星野(佳路 星野リゾート代表)が兼務していたんです。でも、星野は星野リゾートのほうにいましたから、どうしても現場でのリーダーシップは弱くなる。やがて僕がリーダーを任されるようになっても、当初は手探りで……。最初のうちから、喜一郎さん、大野さんみたいなしっかりした信念と現場力がある人がいたら、うちも、もっと混乱は少なかったし、辞めていく人も減ったんでしょうね。

造るだけでなく、売る苦労もありました。何しろクラフトビールが世の中で認知されていませんでしたから。キリンもアサヒもサッポロもサントリーもあるし、そこに来てこのクラフトビールってのは値段も高いし、何なんだ、みたいな。

4種類のクラフトビール
写真=iStock.com/blizzard_77
※写真はイメージです

売っているものは「ビール」の先にある

売り方も最初は大手さんがやるようなことを真似して、普通に営業に行ったり、POPを飾らせてもらったり、「パンフレット置いてください」「ちょっと飲んでみてください」と店頭でアピールしたり……。「大手メーカーの常道」を一通り、一所懸命にやったんですが、まったく売れませんでした。もうやり尽くして、これじゃだめだなと思って、始めたのがお客さんが喜ぶ企画、しかも業界大手がやらないような企画でした。

たとえば、「よなよなエールを旅に連れて行ったらおもしろいよ。ビールと一緒の写真を撮って送ってください。写真展をやります」とか。

「このビールっておもしろそうだ」
「この会社はおもしろいことやってる」

おもしろい人たちが造っているビールを、ちょっと飲んでみようか、そんな気になってもらう。そこを頭に入れながら純粋にお客さんを喜ばすには何をしたらいいかを突き詰めてやっていったんです。