1964年の東京モーターショーにおいて川崎航空機工業は当時の国産最大排気量車両となる『カワサキ500メグロK2』を発表するが、このモデルはダブルネームになっていることからも察せられるように、同社に移籍した旧メグロの技術者との共同作業で開発されている。

1956年、目黒製作所社屋前での従業員たちによる記念撮影。前に置かれているのは発売されたばかりの「スタミナ Z7」
写真提供=川崎重工業
1956年、目黒製作所社屋前での従業員たちによる記念撮影。前に置かれているのは発売されたばかりの「スタミナ Z7」
川崎航空機工業に移った旧メグロの技術者との共同作業によって開発が行われ、1964年の東京モーターショーで発表された「カワサキ500 メグロK2」
写真提供=川崎重工業
川崎航空機工業に移った旧メグロの技術者との共同作業によって開発が行われ、1964年の東京モーターショーで発表された「カワサキ500 メグロK2」

さらにメグロ系技術者は後の名車『カワサキ650W1』の開発でも中心的存在となり、“ビッグバイクのカワサキ”の礎を築いたのだ。

販売開始前に予約が殺到……

そのメグロの名を令和の時代に蘇らせたのが、『MEGURO K3』(以下、K3)なのである。

実はこのK3、完全な新開発ではない。往年のWシリーズを現代的にリバイバルさせた既存モデル、『W800』のスペシャルバージョン的な位置づけだ。しかし、かつての名門メーカーの名を冠するだけあって、各所に古き良き時代を感じさせる作り込みと仕掛けが施されている。

タンクには光の当たり方によって様々な表情を見せるカワサキ独自の銀鏡塗装が施されただけでなく、特殊なコーティング処理によってペイントへの傷に対する自己修復機能も持っている。

「K3」のタンク。銀鏡塗装と黒の配色がクラシックな雰囲気を醸し出している
写真提供=川崎重工業
「K3」のタンク。銀鏡塗装と黒の配色がクラシックな雰囲気を醸し出している

さらにタンクの両サイドに配されたエンブレムは、かつてのメグロのそれをモチーフとしたもの。アルミの立体成型で作られ、熟練した日本の職人の手作業でひとつひとつ5色に塗り分けられている。

新旧のメグロエンブレム。左が現行「K3」、右が1954年発売「ジュニア S2」のもの
写真提供=川崎重工業
新旧のメグロエンブレム。左が現行「K3」、右が1954年発売「ジュニア S2」のもの

またスピードメーター内やサイドカバーには、古き時代のメグロ車を彷彿とさせる「メグロ」の赤いカタカナ(!)ロゴが入っているという凝りようだ。さらには、3年間の定期点検やオイル交換を無償で行うサービスも付帯している。

「K3」のサイドカバーには、かつてのメグロ車にもあった赤いカタカナロゴが
写真提供=川崎重工業
「K3」のサイドカバーには、かつてのメグロ車にもあった赤いカタカナロゴが

ただその分、価格はベース車両のW800よりやや割高に設定されていて税込で127万6000円と、決して気軽に手を出せる額ではない。