25歳の蜃気楼さんは、小学校4年生のときに母親がマルチ商法にハマり生活が一変したという。「苦しいことばかりだった」というその生活を、元妻がマルチ商法にハマったという会社員のズュータンさんが聞いた――。

※本稿は、ズュータン『妻がマルチ商法にハマって家庭崩壊した僕の話。』(ポプラ社)の一部を再編集したものです。

ひとりぼっちで膝を抱えて悲しむ少年
写真=iStock.com/spukkato
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「私が小4のとき、母は信者になった」

2017年、もうすぐクリスマスという頃、蜃気楼さんというアカウントのツイートに目が留まった。

蜃気楼さんのツイートには、小学生のときに母親がX社にハマり両親が離婚したこと、その後、母親の借金で生活が苦しくなったこと、X社のサプリを強制的に飲まされていたこと、それが原因で自殺未遂をしたことなどがつづられていた。

マルチ商法会員の子ども、いわゆるマルチ商法2世の声だった。幼稚園の頃に別れた僕の娘も小学生になっている。

マルチ商法では、子どもたちがどういう思いをしているか、子どもの視点から語られることはない。僕にとって蜃気楼さんの声を聞くことは、離れて暮らす娘の声を聞くことのような気がしていた。

年の瀬も押し迫っていたが、蜃気楼さんの声を聞かずにはいられない。僕は気がつくと蜃気楼さんにDMでインタビューのお願いをしていた。蜃気楼さんは「私の語彙ごい力でどこまで伝わるかわかりませんが協力させてください」と、こころよく了承してくれた。

「母が本気でマルチ商法X社にのめり込むようになったのは私が小学4年生のときでした。小4からの想い出はX社一色です。苦しいことばかりだったけど、誰かに話してもわかってくれなかった。誰も私に手を差し出してくれなかった。X社の話をすれば私が嫌われてしまうから、友達や身近な大人にも相談できず、自分ひとりで抱え込んでいました」