感染者が減らなければ、期限はズルズルと延びる

政府は1月7日、「非常事態宣言」を再度発出した。前回の2020年4~5月時とは違い、今回は東京都と神奈川県、千葉県、埼玉県の1都3県だけとし、全面的な休業要請ではなく、飲食店など業種を絞っての午後8時までの時短要請など“限定的”な対策に留めた。期限は2月7日までの1カ月としたが、これで新型コロナウイルスを封じ込めて感染者を減らすことができなければ、期限がズルズルと延びていくことになりかねない。

記者会見する西村康稔経済再生担当相=2021年1月6日、東京都千代田区
写真=時事通信フォト
記者会見する西村康稔経済再生担当相=2021年1月6日、東京都千代田区

西村康稔担当相は前回とは違って“限定的”な対策に留めたことについて「エビデンス(証拠)がある」と強調した。1年近い新型コロナとの闘いの中で、「学んできた」と胸を張ったわけだ。つまり、昨年4月のように完全に人の動きを止めなくても、新型コロナは封じ込められるとしているわけだ。

だが、本当だろうか。さっそく厳しい予測が出されている。

西浦博・京都大教授(感染症疫学)は試算を公表し、昨年4~5月の宣言時に近い厳しい対策を想定しても、東京の1日当たりの新規感染者数が100人以下に減るまで約2カ月が必要だとした。さらに今回の飲食店の時短営業など“限定的”な対策では、2月末になっても新規感染者数は1300人と、現状と横ばいになると予測している。つまり、現状の対策では「生ぬるい」と言っているわけだ。

第1波では経済への打撃を小さくできたが…

いったい政府は昨年の緊急事態宣言から何を学んだのだろうか。

明らかなのは、緊急事態宣言で完全に人の動きを止めようとすると、経済が大打撃を被るということだ。2020年4~6月期のGDPは1~3月に比べて年率換算で29.2%の減少と、戦後最悪の結果になった。7~9月はその反動で前の3カ月に比べれば22.9%増になったが、実態は「回復」と呼べるものではなく、前年同期比では5.7%の減少が続いている。

例えば4月の全国百貨店売上高は、日本百貨店協会の集計によると前年同月比72.8%減、5月も65.6%減となった。全日本空輸(ANAホールディングス)の4~6月期の国内線旅客は88.2%も減っている。大幅な赤字に転落する企業も続出。パートやアルバイトを中心に非正規雇用も大幅に減少した。

この経済の「猛烈な縮小」から人々の生活を守るために、特別定額給付金や持続化給付金などを支給し、雇用調整助成金の特例を導入して企業に雇用を維持させるなど対策を講じた。結果、第1波は諸外国に比べて影響を小さいまま封じ込めることができた。