ブレーキとアクセルを踏み続けた菅政権
ところが、それ以降、政府の対応は「経済優先」へと大きくシフトしていく。安倍晋三首相の辞任を受けて就任した菅義偉首相は「Go Toトラベル」の継続にこだわり続け、新規感染者が増え始めてもブレーキを踏むことに躊躇した。
「Go Toトラベルで感染が拡大したというエビデンスはない」と言い続け、11月後半の3連休などは新型コロナ流行前を上回る人出が繰り出した。感染者が増えても「検査件数を増やしていることが一因」とし、「重症者は少ない」としたことで、国民の間から危機感が失せていった。
自粛を要請するなどブレーキをかける一方で、Go Toトラベルなどアクセルも踏み続けた結果が、12月以降の「感染爆発」につながったのは明らかだろう。“限定的”な緊急事態宣言というのは、まさにブレーキとアクセルを両方踏む「過去の失敗」の延長線上にある。
封じ込めに有効なのは「短期決戦」のはず
1月7日に東京都が発表した感染確認者は2447人と過去最多を記録したが、全体の7割が「感染経路が不明」という。どこの誰からどうやってうつったか、ほとんど分からないわけで、酒を伴う会食が原因とするにはエビデンスが十分ではない。
もちろん、可能性がある以上、会食を制限するのは対策としては正しい。だが、午後8時までに営業を短縮すれば感染者が増えない、という話にはならない。欧米のようにレストランなどは一斉に休業要請するのが、新型コロナを封じ込めるには取るべき手だろう。
酒の提供は19時までとなると、居酒屋などは事実上、営業できていないのも同然だ。店舗に補償金が支払われるといっても人件費などを考えれば経営を成り立たせるのは不可能に近い。感染拡大のためのブレーキとしては不十分な上に、経営も危機に瀕するとなれば、極めて中途半端な対策ということになる。
4~5月の教訓は、思い切って経済を犠牲にすれば、感染拡大は食い止められるということだ。1カ月耐えれば、その先に明かりが見えるということなら、経営者も従業員も辛抱できる。「短期決戦」で思い切った経済停止を行うことこそ、新型コロナ封じ込めには有効なはずだ。