なぜ「いない」と思い込んでしまうのか
しかし前述の通り、どんなに少なく見積もったとしても、100人単位の学校や職場には、セクシュアルマイノリティが一定程度いるということが考えられます。
では、なぜ「LGBTが身近にいるという実感がなかなか湧かない」のでしょうか。なぜそのように思うのか、そう感じるのか、掘り下げて考えてみましょう。
理由は大きく2つ挙げられます。
一つは、セクシュアルマイノリティの多くがカミングアウトしていない/できない状況にあるからです。この状況はデータにおいても裏付けられています。厚生労働省の委託事業の調査によれば、「いまの職場の誰か1人にでも、自身が性的マイノリティであることを伝えているか」という設問に対して、伝えているという人は「レズビアン・ゲイ・バイセクシュアル」で7.3%に過ぎません。「トランスジェンダー」でも15.8%となっています(トランスジェンダーは、男女別取り扱いや施設利用に関する課題から、カミングアウトをして差別や偏見を受けるとしても、カミングアウトせざるを得ない状況も考えられます。ただそれでも、8割以上がカミングアウトしていません)。
カミングアウトされやすい人と、されにくい人がいる
以上のようなデータの傾向などを踏まえると、仮に5%がセクシュアルマイノリティであったとしても、そのうち周囲に当事者であると明かしている人が一割だとすれば、単純計算で0.5%程度、200人に1人ということになります。
とはいえそれでも多くないか? と思われる方もいらっしゃるかもしれません。確かに、体感としてそのようなこともあり得るかもしれません。ただ、当事者は誰にでもカミングアウトするわけではありませんので、結果として、カミングアウトをされやすい人とされにくい人がいます。される人は何人にもされているが、されない人は全くされない。そのため、人によっては、体感で1000人に1人くらいしかセクシュアルマイノリティがいない、と感じられてもおかしくはありません。