アイディアの多くは仕事が進んだところで出る

実は、この点について、私の考えは変わりました。テーマを見いだすための最も確実な方法は、「仕事を続けること」です。仕事を続けていると、その中から新しい疑問が生じ、新しいテーマが見つかるのです。

これを「クリエイティング・バイ・ドゥーイング」ということにしましょう。「ラーニング・バイ・ドゥーイング」ということがいわれますが、知的生産においては、「クリエイティング・バイ・ドゥーイング」が重要なことです。これは、「仕事をしながら創り出す」ということです。アイディアの多くは、仕事がある程度進んだところで出てくるのです。

とにかく始める、すると成長する

テーマも同じです。「テーマ探しをやって適切なテーマを探し当て、それから仕事を始めて進めて完成させる」ということは、滅多にありません。そうではなく、「何かのテーマで仕事を始めていろいろ調べたところ、別のもっと適切なテーマがあると分かり、実はそれが本当の金鉱であることを見いだし、テーマをそれに変更して仕事を進める」という場合のほうが多いのです。つまり、テーマも、試行錯誤でしか見いだせない場合が多いのです。

野口悠紀雄『書くことについて』(角川新書)
野口悠紀雄『書くことについて』(角川新書)

したがって、必要なのは、「とにかく始める」ことです。準備ができてから始めるのでなく、準備がなくとも始めるのです。

多くの人は、テーマが見つかってから動きます。その順序を逆転させることが必要なのです。「とにかく何か書いてみる」、「すると成長する」。このことを、私は、毎日実感しています。仕事の中で一番難しいのは、出発することです。出発すれば進みます。そして完成します。

多くの人は、テーマが見つからないから始めないのですが、そう簡単にテーマが見つかるはずはありません。そして、仕事を始めないと、そのことに頭が向きません。しかし、仕事をとにかく始めることなら、誰にでもできます。

「クリエイティング・バイ・ドゥーイング」は、私の最新刊『書くことについて』(角川新書)が提案する最も重要なノウハウの1つです。そして、そこではただ「始めよ」というのでなく、そのための仕掛けを、以下のように提案しています。