優れた文章とはどんなものか。「超整理」シリーズなどで知られる野口悠紀雄氏は「構造や文法が正しくても、読み手の頭に何も残らなければ意味がない。そのためには書き手の頭の中が整理されていることが重要だ」という――。(第4回)
手書き
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文章の構造を正しくするだけでは意味がない

「文章の書き方」についての本はいくつもあります。そこに書かれているのは主として「文章の構造をどう整えるか?」といった問題であり、こうした注意は大変重要なことです。ただし、多くの場合、これは校閲者の立場から指摘されるような事柄です。

文章の構造を正しくし、理解しやすくするための注意に従えば、そこに書いたことは理解してもらえるでしょう。しかし、「いっていることはよく分かったけれども、結局何も残らなかった」というのでは、意味がありません。

つまり、文章の構造を整えることは、必要条件ではあるのですが、十分条件ではないのです。逆にいえば、内容さえ充実していれば、文章がある程度の悪文であっても、許されるでしょう。