“必要条件”と“十分条件”を取り違えてはならない
このウエブ連載の第2回で、「始めれば完成する」と述べました。「始めなければ完成しない」というのは自明のことです。しかし、ここで主張したのは、その逆命題なのです。逆命題は必ずしも真ではないので、これは自明のことをいったわけではありません。
あるいは、必要条件をいっているのに、十分条件をいったと読者に誤解されることもあります。例えば、「日本の賃金を上げるには生産性の向上が必要だ」と主張したとします。それに対して、「では生産性が向上すれば、必ず賃金が上がるのか?」といった批判をされることがあるのです。
しかし、これは先の命題の逆命題なのであって、それを主張したわけではありません。指摘したのは、賃金を上げるための必要条件であって、十分条件ではありません。
1500字程度のブロック単位で論述を構成
文章にはアイディアのひとまとまりの単位であるブロックがあり、文字数は1500字程度です。このブロックの中においても、文章の順序が問題になります。
結論と理由はどちらを先に書くのがよいのか? 結論を先に書いて、後からその理由を示すべきか? それとも、前提、仮定から始めて徐々に論理を積み上げ、最終的な結論を導くという書き方にするのか?
論理的には後者が正しい方法ですが、読者は結論を早く知りたいと思っているかもしれません。仮定の部分があまりに長いと、途中で放り出されてしまうかもしれません。
あるいは、一般的な命題を最初にいって、その後に具体的、ないしは個別的な事例を示すのがよいのか? その逆がよいのか?
これも難しい問題です。個別的なことだけをいっていると、全体として何を主張したいのかよく分からなくなります。他方で、一般的なことは抽象的で理解しにくい場合が多いので、最初にそれを出されると、読者は理解しにくいと感じるかもしれません。