筋肉が増えれば消費エネルギーも増える

では、安静時には体内のどこで、とくに多くのエネルギーが消費されているのでしょうか。全身に血液を送り届けている心臓でしょうか。あるいは、全身の司令塔の役割を果たす脳でしょうか、脳とともに最大の臓器である肝臓でしょうか。

池谷敏郎『代謝がすべて やせる・老いない・免疫力を上げる』(角川新書)
池谷敏郎『代謝がすべて やせる・老いない・免疫力を上げる』(角川新書)

じつは、心臓よりもずっと多く、脳や肝臓と同程度か、それ以上にエネルギーを消費しているのが、全身の筋肉です。

基礎代謝量の臓器・組織別内訳を見ると、次のようになっています。

・骨格筋(いわゆる筋肉) 22%
・脳 20%
・肝臓 21%
・心臓 9%
・腎臓 8%
・脂肪組織 4%
・その他 16%

骨格筋とは、姿勢を支え、体を動かすための筋肉のこと。一般的に筋肉と言われるのが、骨格筋です(そのほか筋肉には心臓を除く内臓や血管の壁を構成する「平滑筋」、心臓の壁を構成する「心筋」もありますが、本記事では骨格筋の意味で筋肉という言葉を使います)。

筋肉は、伸ばしたり縮めたりして動かすときにエネルギーを消費するイメージがあるかもしれませんが、何もせずにじっとしているときにもじつは結構なエネルギーを消費しています。

まず、基礎代謝には体温維持のために使われるエネルギーが含まれますが、さまざまな臓器のなかでも最も多くの熱を生み出しているのが筋肉です。先ほど熱を出しやすい臓器として脳を紹介しましたが、筋肉は、安静時にも脳以上に熱を生み出しています。

また、筋肉はタンパク質でできていて、そのタンパク質は合成と分解を常に繰り返しています。つまり、筋肉は日々作り替えられているのです。筋肉全体の約1.8%が日々生まれ変わっていると言われています。筋肉(タンパク質)の合成と分解にもやはりエネルギーが使われるので、筋肉を維持するだけでもエネルギーが必要なのです。

筋肉量が増えれば、その分、消費するエネルギーも増えます。

「引き締まった体」に筋肉は不可欠

基礎代謝量全体のうち、筋肉が消費するエネルギー量は2割強なので、割合としてはそう多くないように感じるかもしれません。でも、「安静時の脳の代謝を上げましょう(消費エネルギーを増やす)」「肝臓の代謝を上げましょう」と言われても、自分でコントロールすることはできませんよね。

筋肉量であれば、増やすことができます。つまり、基礎代謝のなかでも、ほぼ唯一自分でコントロールできるのが、筋肉が消費するエネルギーといっても良いでしょう。

ですから、基礎代謝を高める「燃費の悪い体づくり」の基本は、筋肉をつけることなのです。

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