30年前は過半数が日本企業だった

一方、世界時価総額トップ10企業を見ると、30年前は過半数が日本企業だったが、今は2019年上場したサウジアラビア国営石油会社を除いては、アメリカと中国の巨大企業が占め、いずれもDX企業だ。

なぜこうなってしまったのかと言えば、教育の失敗である。20世紀の教育があまりにもうまくいきすぎたために、教育そのものを変えられないのだ。教育が変わらないから人材が育たない。人材が育たないから、21世紀型のDX企業もなかなか出てこない。

教育システムおよび企業や社会そのものが21世紀に移行できない。これが日本の長期低落の根本原因であり、最大の問題なのだ。

日本が圧倒的に立ち遅れてしまったDXはコロナ禍で否応なく加速する。たとえば業務の自動化によって日本のホワイトカラーの半分は要らなくなるだろう。ハッキリ言えば失業の山を乗り越えなければ日本は向こう側、すなわち21世紀には渡れないと思う。

問題は要らなくなった人をどうするかだ。失業率を抑えたい政府は「補助金を出すから内部でキープしろ」と言うがこれは最悪。今後の日本はかつてのドイツの「アジェンダ2010(シュレーダー改革)」のような労働改革が絶対に必要になる。つまり生産性の低い労働者は解雇できるようにして、代わりに失業保険でカバーしながら21世紀型のスキルが身につくように国の責任で再教育を施して雇用市場に戻していく。この循環をつくり上げるのが、最大の国家事業なのだ。補助金を出すから雇用を社内にとどめておいてくれ、とやっている間は、日本は21世紀型人材を生み出すことができない。

以上、菅政権は20世紀の不都合を部分的に掃除し始めた点は評価できるが、没落国家からの脱却のための人材輩出という課題はまだレーダーにも映ってないという点で安倍政権の延長線という評価しかできないのだ。

※DX(デジタル・トランスフォーメーション)=デジタル技術によって人々の生活をよりよい方向に変えたり、ビジネスを抜本的に変革すること

(構成=小川 剛 写真=時事通信フォト)
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