歴代最長政権に日本人は優しすぎた

2020年9月16日、安倍内閣が総辞職した。安倍晋三前首相の在職日数は2012年12月の第2次安倍内閣発足から連続で2822日。第1次内閣を含めると通算3188日。通算在職日数で桂太郎元首相(2886日)、連続在職日数で大叔父の佐藤栄作元首相(2798日)を抜いて、いずれも歴代最長だ。

辞任会見する安倍前首相(2020年8月28日)。
辞任会見する安倍前首相(2020年8月28日)。(AFLO=写真)

安倍首相が辞意を表明したのは、歴代最長の記録を塗り替えた4日後のこと。辞職の理由は1次政権を投げ出したときと同じく、持病の潰瘍性大腸炎の悪化である。未曾有みぞうのコロナ禍の真っ只中、自分で引き延ばした自民党の総裁任期を1年残しての途中辞任は「無責任」の批判を受けたとしても仕方あるまい。ところが安倍首相の辞任表明後、30%台に低迷していた内閣支持率は50%台まで急上昇した。同情票というか、優しすぎる日本人のメンタリティなのかもしれないが、安倍政権の7年8カ月を正しく総括できないとすれば、これは国民の集合知の欠如と言っていい。

安倍政権の功罪は、3つぐらいの観点で検証するとわかりやすいと思う。1つは安倍前首相が「やる」と明言していたことをやったかどうかである。安倍政権発足当初から強く発信していたメッセージの1つは「戦後レジームからの脱却」だった。