なかなか実現しなかった訪日作戦の思い出

台湾の李登輝元総統が2020年7月30日、入院していた台北市内の病院で亡くなった。享年97だった。氏との思い出は尽きない。

台湾の李登輝元総統。
台湾の李登輝元総統。(AFLO=写真)

李登輝氏は日本統治時代の1923(大正12)年に台湾に生まれた。戦時下の43年に京都帝国大学の農業経済学科に進学、学徒動員も経験している。敗戦後、日本軍が台湾から撤退した46年に台湾に帰って台湾大学に編入したために、京都大学は卒業していない。アメリカのコーネル大学などへの留学を経て農業研究者になった李登輝氏は、蔣経国(蔣介石の長男で第3代総統)の知遇を得て国民党に入党し、政治の世界に進んだ。台北市長や台湾省主席などを歴任して、84年には蔣経国から副総統の指名を受ける。88年に蔣経国が病死したために、副総統の李登輝氏が中華民国第4代総統と国民党主席に就任した。

以降2000年まで12年間にわたって総統を務め、台湾の経済発展を牽引するとともに、中国の圧力に屈することなく台湾の独立を守り続けた。共産党との内戦に敗れて大陸から渡ってきた国民党政府による戦時体制、権威主義体制を解消し、台湾人を主体とした民主主義体制に無血で移行させた功績も大きい。1996年の総統選挙で直接選挙を実現して初の民選総統に選出されるなど民主化を推進して、「台湾民主化の父」と称された。