中国発の動画投稿アプリ「TikTok(ティックトック)」を巡り、米連邦地裁は9月27日、トランプ政権による配信禁止措置の一時差し止めを命じる判断を示した。ただし、トランプ政権が11月12日に予定されているTikTokの全面禁止措置については一時差し止めを認めなかった。つまり11月12日までにTikTokが米国企業へ売却されない場合、TikTokは閉鎖されてしまう。

TikTokとWeChat、米当局が新規DL禁止を発表。トランプ政権はなぜ両アプリを運営するバイトダンス社を狙い撃ちにすのだろうか。
写真=ロイター/アフロ
TikTokとWeChat、米当局が新規DL禁止を発表。トランプ政権はなぜ両アプリを運営するバイトダンス社を狙い撃ちにすのだろうか。

「ファーウェイ」の二の舞を避けようとしていたが…

今回のTikTokに対する制裁の理由は、中国の通信機器大手「ファーウェイ」を締め出したのと同じ、「国家安全保障上の懸念」だ。しかし、TikTokを運営するバイトダンスは、そうした「懸念」に配慮し、アメリカの法律とビジネス慣習に歩調を合わせてきた。

たとえば米国のビジネスにおいて、社長を含む同社のトップマネジメント、ミドルマネジメントは米国人だ。またサーバーは米国にあり、米国のユーザーのデータも米国のデータセンターに置いてある。運用チームもローカライズされ、1500人のアメリカ人従業員を雇用し、今後1万人の雇用を創出することを約束している。

また、フランスのセキュリティ関係の研究者Elliot Alderson氏は、TikTokが疑わしい動作はしておらず、特別なデータの流出もしていないと結論をつけている(※1)。制裁の根拠となる中国政府へ情報流出の疑惑は、確固たる証拠があるとはいえない。それにもかかわらず、なぜトランプ大統領は禁止措置に踏み切っただろうか。

(※1)TikTok:Logs, Logs, Logs