ニッポン放送アナウンサーの吉田尚記氏は長年会話に悩んできた経験から、サロン「吉田尚記コミュニケーション研究室」を立ち上げた。これは、コミュニケーションに悩む人が集い、専門家と一緒に解決策を探る場だ。今回はそのサロンでのやりとりから、自分の知らない話題を盛り上げる方法を紹介しよう――。
※本稿は、吉田尚記『元コミュ障アナウンサーが考案した 会話がしんどい人のための話し方・聞き方の教科書』(アスコム)の一部を再編集したものです。
タモリが決めつけた言い方をする理由
【サロン参加者A】相手の話している話題に自分が詳しくないと、心理的なブレーキがかかってしまいます。
【サロン参加者B】自分が知らない話題を掘り下げるのは、失礼だと思ってしまいます。
【吉田尚記】私にとってはまったくの逆で、「知らないこと」が出てきたら大チャンスだと思っています。
タモリさんという、日本で一番長い間、そして一番多くの人と、雑談をしてきた方がいます。毎日現れる新しい相手についての情報を、すべて調べ尽くすのは無理だったはずです。
ゲストに話してもらわなくてはいけないコーナーで、タモリさんはどうしていたか? ある俳優さんが「犬を飼っているんです」といったら、「へー、犬っていうと、最近はシベリアンハスキーが流行ってるんじゃないの?」と聞いていました。
すると、普段あまりしゃべらない俳優さんが、「いえ、ハスキーが流行ってたのはちょっと前で、いまはゴールデンレトリバーが流行ってるんですよ」「へぇ、ゴールデンレトリバーはどんな犬なの?」と、自分が知らないことを武器にして、そして勝手な思い込みを使って、知らないことをどんどん掘り下げ始めるんです。
わざと決めつける、間違えるという武器もあります。これは強力です。「出身って東京でしたよね?」「ロックとかお好きそうですよね?」といった具合に、何の根拠もなく、勝手に決めつけてしまう。人は、間違った情報を訂正するときに、一番しゃべる生き物なんです。想像してみてください。あなたが、実は社会人なのに、学生ですよね? とか聞かれたら、社会人としての自分について、話し出したくなりませんか?