2300万円以上の報酬の社外取締役が、経営陣に文句を言えるか

さて、バフェット基準で見て最大手の三菱商事はどんな状況なのだろうか。社外取締役の自社株保有(2020年3月期)を調べてみると、大学教授の西山昭彦氏は6373株、元外交官の齋木昭隆氏は1029株、元通産官僚の立岡恒良氏は4651株、元三菱自重工業社長の宮永俊一氏は6372株を保有していた(新任の秋山咲恵氏を除く)。

これに株価を掛け合わせると保有額が出てくる。9月8日の終値ベースで計算すると、西山氏1645万円、齋木氏265万円、立岡氏は1200万円、宮永氏1645万円となる。相当大きいと思ったら現実を見誤っている。取締役報酬との兼ね合いで見なければならないからだ。

有価証券報告書によれば、社外取締役6人は合計1億4000万円の報酬をもらっている。月数回の会合に出席するだけで、1人当たりで年間2300万円以上の報酬を得ている計算だ。最も自社株保有額が大きい西山と宮永の両氏でも、毎年得られる現金報酬が自社株保有額を上回っている。

ここから何が読み取れるのか。社外取締役は経営陣と仲良くして、毎年2000万円以上の現金を得ようとするのではないか。一方で、多額の損失計上で株主利益が損なわれても、あまり気にしないのではないか。仮に持ち株が紙くず化しても、西山と宮永両氏の場合で最大の損失は1645万円にとどまるのだ。

バフェット基準と対極にあるのが住友商事と丸紅

要するに、三菱商事の社外取締役は「株主の利益を守る」よりも「経営陣に気に入られる」を優先するインセンティブを持ちかねないということだ。オーナー目線になっていない、言い換えればバフェット基準にかなっていない。

実は、5大商社の中では三菱商事はマシなほうだ。西山氏と宮永氏の保有額は5大商社の社外取締役全員の中で最大であり、バフェット基準に最も近い位置にある。

バフェット基準と対極にあるのが住友商事と丸紅だ。自社株を保有している社外取締役が1人も存在しないのだ。少なくとも形のうえではオーナー目線を完全に欠いており、仮に会社がつぶれたとしても社外取締役の懐がまったく痛まないガバナンス構造になっている。

※編集部註:初出時、「バフェット基準と対極にあるのが住友商事と伊藤忠商事だ」としていましたが、正しくは「住友商事と丸紅」です。訂正します。(10月1日14時00分追記)

日本でガバナンス議論が交わされるとき、グローバル基準からかけ離れた意見が飛び出すことがある。その中の一つが「社外取締役は中立性を維持するために自社株を保有しないほうがいい」である。これはオーナー目線を真っ向から否定するもので、バフェット基準とは真逆である。