「金」を否定してきたバフェット氏
さすがの「懐疑論者」ももう認めざるを得ない展開だ。
金価格が8月7日に1トロイオンス=2072.50ドルの史上最高値を付け、国内税込小売価格も1グラム=7769円の史上最高値を付けた。そこをピークにいったんは1トロイオンス=1912ドル台まで急落したが、再び力強く上昇し、8月18日には再度2000ドルを突破してきた。
しかし、金の可能性を否定し続けてきた人物がいる。世界的な著名投資家であるウォーレン・バフェット氏、その人である。
バフェット氏の動向は1990年代後半からウオッチしているが、当時から金に対するバフェット氏のスタンスは一貫していた。
「金には金利もつかず、配当もないため、投資する意味はない」
バフェット氏は言わずと知れた株式投資のプロ中のプロであり、誰もまねできない実績を上げている。しかし、コモディティ市場のプロである私にとって、当時バフェット氏の発言にはまったく共感できなかったのを鮮明に覚えている。
以来こんにちに至るまで、バフェット氏が金や金鉱株を買うことはなかった。その投資判断のスタンスは一貫していてブレることはなかった。
「投資の神様」に何が起こったのか?
ところが、である。
そのバフェット氏が率いる米投資会社バークシャー・ハサウェイが、カナダの産金大手バリック・ゴールド株を約2090万株、56億ドル相当を新たに取得したことが8月14日、米証券取引委員会(SEC)に提出した6月末の保有状況報告で判明した。
これには世界中が驚いた。「金利も配当もつかない金への投資は無駄」と公言し、実行してきたバフェット氏が……。なぜ今回、バフェット氏はいきなり金鉱株に投資することにしたのだろうか。
真相は本人に聞いてみないとわからないが、SECに提出した先述の保有状況報告で「何をしたか」はわかる。
米銀行株の保有を大幅に削減し、ゴールドマン・サックスの株式はすべて売却。ウェルズ・ファーゴやJPモルガン・チェース、バンク・オブ・ニューヨーク・メロンなどの大手金融機関の保有株式を減らしているのである。これは、バフェット氏が米経済や米銀の先行きを悲観したことが背景にあると考えられる。