日本人女性の約7割は「生理前の心身の不調」に悩まされている。これは「PMS」や「PMDD」と呼ばれる病気だが、男性だけでなく女性でさえもどんなつらさがあるのか知らない人が少なくない。フリーライターの旦木瑞穂さんは「PMSやPMDDの当事者は、同じ女性に自分のつらさを理解してもらえず、悩んでいる」という——。
女性と生理痛
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日本人女性の約74%が「生理前のしんどさ」に苦しんでいる

東京大学医学部付属病院の医師・大須賀穣氏らの研究によると、日本人女性の約74%が、PMS(生理前症候群)やPMDD(月経前不快気分障害)といった月経随伴症状に苦しんでいるという(※)

※出典:Tanaka E,Momoeda M,Osuga Y et al.Burden of menstrual symptoms in Japanese women;results from a survey-based study. journal of Medical Economics 2013;Vol 16, No 11:1255-1266

PMSやPMDDは月経随伴症状とも呼ばれ、男性だけでなく、女性でも知らない人が少なくない。一体どんな病気なのか。関東在住、20代半ばの会社員・山戸舞さん(仮名)の事例を紹介しよう。

20代女性が生理前の心身の不調でボロボロになった事例

山戸さんは生理の2週間以上前から、以下のようなPMSやPMDDの心身の症状に悩まされ、ごく普通の日常生活を送るのにも苦しんでいる。

集中力の欠如/物忘れ/気怠さ/身体が鉛のようになる/感情の劇的な起伏/易怒性/非常に涙もろくなる/食欲の増加/被害妄想/ネガティブ思考/自己嫌悪/むくみ/偏頭痛/吐き気/眠気の増加/パニック・自殺願望

山戸さんは、以前、職場の女性上司からパワハラを受けた。それにより、とりわけ生理前に自分の体調や感情をコントロールすることができなくなってしまった。

そこで最初に婦人科を受診。婦人科医は、これまでの経緯を聞き、親身に相談に乗り、PMDDと診断。「生理前にこのような症状で苦しんでいる人は、あなただけではない」と言ってピルを処方し、精神的症状の改善に精神科受診を勧めた。

精神科へ行くと、やはり医師はPMDDと診断し、「基本的にPMDDはピルでは改善は見られにくい」とのことで、抗うつ薬のSSRI(選択的セロトニン再取り込み阻害薬)を処方した。

山戸さんの場合、ピルはPMDDの症状には効かなかったが、生理不順になりやすい体質だったため、生理をコントロールするために処方され、服用を続けている。漢方薬もいくつか試したが、五苓散がむくみや頭痛に効いた以外は、効果が得られなかった。

精神科で処方されたSSRIは、不安やパニックに効いたが、現在はのんでいない。山戸さんは、PMDDの原因は仕事によるストレスだと考えており、「精神薬に頼ってまで続けなくてはならない仕事なのか?」という疑問が湧き、仕事を辞めたからだ。

仕事を辞めてからほぼ1年経ち、山戸さんはかなり体調が安定した。しかし、現在でも生理前になると、過去に「そんなこと女性なら誰でも我慢している」「自己管理できないあなたがおかしい」などと言われた記憶が重くのしかかってきて、精神的に押し潰されてしまう。山戸さんが最もつらいと感じるのは、「自分のつらさを理解してもらえないとき」で、中でも「同じ女性から理解を得られないとき」だと話す。