生理のある女性でさえ知らない「月経随伴症状」の症状

PMSとPMDDはいずれも「月経随伴症状」と呼ばれるが、その症状は異なる。

PMS(PreMenstrual Syndrome・生理前症候群)は、月経開始の3〜10日くらい前から始まる精神的・身体的症状で、月経開始とともに減退・消失する。70%ほどの女性が何らかの症状をもち、約6.5%の日本人女性が社会生活に影響がある中等症状以上との報告があり、治療対象となっている。

腹痛で、ベッドから立ち上がれない女性
写真=iStock.com/Moyo Studio
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いらいら/のぼせ/下腹部膨満感/下腹痛/腰痛/頭重感/怒りっぽくなる/頭痛/乳房痛/落ち着きがない/憂鬱、の順に多いといわれている。

通常、ホルモン異常はなく、排卵を抑制するとPMSが発症しないことが確認されていることから、黄体ホルモンが誘因だといわれているが、また別の研究では、うつ状態を誘導する受容体である黄体ホルモンに対する感受性が高いために発症するという報告もある。PMSの原因はいろいろな説があり、まだ解明されていない。

一方、PMDD(PreMenstrual Dysphoric Disorder・月経前不快気分障害)は、発症はPMSと同じだが、PMSよりも精神症状が強く現れるのが特徴。日本人女性の約1.2%がPMDDという報告があり、PMS同様、治療対象となっている。

月経周期における発症時期はPMSと同じだが、焦燥感/不安感/脅迫感/自己喪失感/涙もろさなどの精神症状が強く、学業・仕事・家庭生活上、あるいは人間関係上、日常生活に支障をきたすものをいう。PMDDはPMSの重症例であり、情動関係の症状が前面に出た例ともいわれている。

女性の生理前の苦しみに対峙した2人の男性の戸惑い

PMSやPMDDの苦しみを和らげるには周囲の理解が欠かせない。どのように対応すればいいのか。近くにPMS・PMDDと思われる女性がいた2人の男性の事例を紹介しよう。

■事例1.家庭の事例

夜23時近く。仕事から帰宅した40代会社員のAさんは、いつもより家の中が雑然としていることに気づく。専業主婦の妻は起きていたが、テレビを見ながらソファで横になり、動こうとしない。Aさんは、用意してあった夕飯を自分でテーブルに並べ、食べ始めた。

すると妻が突然、「冷蔵庫にサラダもあったでしょ? ちゃんと見てよ!」と声を荒らげる。

カチンときたAさんは、「気付かなかっただけだろ! こっちは疲れて帰ってきたのに、いつまでもダラダラしやがって!」と言ってしまい、けんかに発展……。

Aさんの妻は、いつもなら用意してあった夕飯を温めたりご飯をよそったりしてくれるが、月に数日はこんな調子だった。