「でも、陰口を言われるのはイヤだし、指摘されるまで気づかないことだったので、正直に言ってくれること自体はありがたいと思えたんです。そこを感謝しながら、気に障った理由を教えてもらって、次回はどうすればいいか建設的に話をしたら、むしろ関係はよくなりました」

また仕事場で起きる現象は全部「行動」であり、行動によって衝突が起きたという見方も役立つという。自分の人格を否定されるのは傷つくが、行動は間違えることもあれば、変えることもできる。行動に焦点を当てることで、大きく凹まず、改善へと向かえるのだ。

無理なお願いを断る

急を要する用事、手間のかかる案件、避けて通りたい仕事……。働いているかぎり、無理なお願いとも無縁ではいられない。それに対して谷本氏は「断らない」という。

「『フィードバックはポジティブから入る』と説明しましたが、物事はイエスから入るのが大事だと考えているので、最初から『できません』とは言わないようにしています。突拍子のない話でも、相手が何をやろうとしていて、それがどうすれば実現しそうなのかをまずは一緒に考える。別の案を提案したり、他の人を紹介したりして、相談をどうしたらイエスに変換できるのか、意見を出し合うといいのではないでしょうか」

受けた依頼は、いったん咀嚼して考えたい。まずは「なるほど」と否定しない態度を見せて、「そこで一番したいことは何?」と質問すると相談の本質が明確になる。

同様に堀内氏も「基本的に断らない」という姿勢だ。

「どんな無理難題でも、困った素振りを見せないで、快く受けるようにしていますね。自分が関与したほうがいい結果になるだろうという自負があるし、最終的に組織にとってプラスになり、自分の成長にもつながるものだと思うので。結局できなくても、最大限の努力はここまで尽くしたということを報告すればいいんです。お願いしてきた側も、それに文句を言うことはありませんから」

快く受けたことで相手からの信頼感は強まり、その後、自分がお願いした場合に動いてくれる可能性も高まる。「無理なお願いをすると引き受けるはワンセット」(堀内氏)なのだ。

堀内隆利(ほりうち・たかとし)
大和証券 営業企画部 NPS推進室長
2003年入社、茨木支店配属。その後、IR室、人事部付海外留学を経て、15年営業企画部に配属。18年より現職。リテール部門における顧客本位の業務運営および営業品質の向上を統括する。
 

谷本美穂(たにもと・みほ)
グーグル日本法人 執行役員人事本部長
慶應義塾大学卒業後、人材サービス会社を経て2000年GEに入社。リーダーシップ開発、グローバルリーダーの育成などに携わる。18年グーグル入社。中学生2人の母。
 
(撮影=大崎えりや)
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