ほんの少し前まで、中高年の男性や女性が異性に関心を示すと「色狂い」「変態オヤジ」と揶揄されたものだ。が、近頃では、夫婦間だけではなく、「恋心」や「性」に関心を持ち続ければ、心身ともに充実し、張りのある熟年ライフが送れると言われるようになった。それでは定年を迎えた日本人はどのくらいセックスをするものなのだろうか。

日本性科学会「セクシュアリティ研究会」は、有配偶者について「40~70代のセクシュアリティ調査」(2000年)を行った。それによると、配偶者と月1回以上のセックスをしている比率は、男性が60代前半で62%(女性42%)、60代後半で39%(女性36%)、70代前半で26%(女性20%)となっている。

性人類学者で“せい”を主宰し、不感症などセックスに悩む女性のために「せい奉仕隊」を組織したキム・ミョンガン氏がこう指摘する。

「70歳前後の男性でも、妻と離・死別したから性的パートナーが欲しいので、そういうサークルを紹介してほしいと相談に来ます。性的能力は若い頃より落ちるのは当然ですが、日常的に体の手入れをしている人や定期的に性的パートナーがいる人は衰えが遅い。

誰でも週1回のセックスが可能かといえば、それは個人差がありすぎますが、相手が代わったらOKという人はいます。過去、満足があった人はもう一度味わいたいと願うし、なかった人でも、このままで死にたくないとの思いが強い」

ある風俗情報誌の編集者によると超高齢化社会を迎えて性風俗業界にも、中高年をターゲットにした性風俗店が増えているという。インターネットで検索すると、それらしき店はすぐにヒットする。都内西部を主な営業エリアにする高齢者専門のデリバリーヘルス(デリヘル)店のサイトにはこんな惹句が躍る。〈私は介護施設で働いたこともありますが、「性」についての関心度はシニアの方も変わりないことを知り、「性の介助」が出来れば幸いと思い専門店を立ち上げました〉

さらにこんな説明も続く。「保護者・介護の方へ」と呼びかけ、〈介護しきれない手間を私たちにお手伝いさせてください〉。

この場合の「手間」とはもちろん性的処理を指す。料金は60分が1万8000円、基本サービスとしてオールヌード、シャワータイム、生キス、全身リップマッサージ、シックスナインなどが並ぶ。