ユーロを皮切りに外国為替に異変
膠着が続いていた外国為替相場にこのところ動きがみられる。主役は欧州の通貨ユーロだ。ユーロの対ドルレートは7月1日時点の終値では1ユーロ1.1252ドルであったが、月末31日の終値では1.1776まで上昇、この間の変化率は4.7%となった。対円でも終値で1ユーロ120.93円から124.70まで上昇、取引時間中には125円台にもワンタッチした。
外為市場でユーロが好感された最大の理由は、欧州連合(EU)が復興基金(recovery fund)の創設で合意したことにある。EUは7月17日から異例となる4日間の非公式首脳会議(サミット)を開催し、コロナ禍で打撃を被った経済の復興を後押しするための基金を創設すると決定した。このことが投資家に好感され、ユーロ相場を上昇させる推進力になった。
この復興基金をめぐっては、財政協調に積極的なドイツとフランスといった主要国に対して、財政協調に消極的なオランダやスウェーデンなどの北部諸国、さらに法律の支配や人権の保護などのあり方をめぐって主要国に反発する中東欧諸国がそれぞれ反発する事態が生じた。こうした対立は、重要事項の決定を全会一致で決めるEUにとって、今後の政策運営のあり方をより難しくさせると危惧される。
もちろん復興基金自体に問題がないわけではないが、今回の合意により、コロナ禍での景気の悪化が顕著なイタリアやスペインといった南欧諸国に対する支援のめどが立った。また資金の調達にあたって共同債が発行されるなど、EUの最大の課題である財政の一元化についても弾みがつくことになった。こうしたことを投資家が好感したことが、足元のユーロ相場の上昇につながった。