若い世代の人たちが旭酒造のやり方を学ぶワケ

ちょうどそのとき描いていた『会長 島耕作』の中で、ミャンマーで杜氏(とうじ)のいない酒造りをしようというプロジェクトを取り上げている最中だったので、博志会長と一宏社長には詳しく取材をさせていただきました。2016年のことです。

初めてうかがった12階建の本蔵は、山陽新幹線のJR徳山駅から岩徳線という1両車が運行するローカル線に乗り換えて走ること40分ほどのところにある周防高森駅が最寄駅。さらに、駅から車で15分ほど行った、山や川などの大自然に囲まれ、田畑が広がる静かな町に目立つように本蔵はそびえ立っていました。

「ミャンマーで山田錦の栽培は可能か?」
「杜氏のいない酒造りの特徴は?」
「いったい、どうやって造るのか?」

弘兼憲史『「獺祭」の挑戦 山奥から世界へ』(サンマーク出版)
弘兼憲史『「獺祭」の挑戦 山奥から世界へ』(サンマーク出版)

念入りに取材させていただきました。島耕作がチャレンジした日本酒名は「喝采」。明らかに「獺祭」をイメージしています。山奥の町にそびえ立つ12階建ての本蔵を見学させていただいたり、酒造りの工程を一つひとつ丁寧に教えていただいたり、杜氏をあてにしない「四季醸造」の仕組みも実際に見ることでよくわかりました。

「獺祭」の成功を羨んで、「あの酒は機械で造っているから」と揶揄(やゆ)する声も聞きますが、とんでもない! 酒米である山田錦への強い思い入れから、精米、洗米、蒸米むしまい(こうじ)造り、仕込み、上槽(じょうそう)、瓶詰めと、それぞれの工程にどれくらい人の手がかかっていることか。同じ酒蔵の製造工程に換算するなら、ゆうに2.5倍から3倍近い人手がかかっていることも、現場を拝見して初めて知りました。

最近では、日本酒の製造に関わる若い世代の人たちの多くが、積極的に旭酒造のやり方を学んでいるほどです。そして、国内外で「獺祭」を愛するお客様からの声が、彼らの情熱のすべてを物語っていると私は思っています。

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