いくらでも借金できるなら税は必要ない?

日本でもMMTという言葉の認知度が上がっていく中で、MMTについては様々な意見が出るようになった。もちろん否定的な意見だけでなく肯定的な意見もある。しかし、MMTの表面的な部分だけを理解していたり、先程のハイパーインフレのように誤った理解をしているケースも増えているように思われる。

森永康平『MMTが日本を救う』(宝島社新書)
森永康平『MMTが日本を救う』(宝島社新書)

たとえば、「MMTによれば国はいくらでも借金ができるわけだから、税金は必要ない。よって、無税国家ができあがる」というものだ。

「モズラーの名刺」や「タックス・ドリブン・マネタリー・ビュー」の説明時に述べた通り、現代の不換紙幣を国民が喜んで受け取り集めようとするのは、貨幣が納税手段として使えるからである。つまり、「税が貨幣を駆動させる」というMMTの基本的な考え方を全く理解できていない人にしか「MMTは無税国家を実現する」という発想ができないのだ。

統合政府は国民に対して納税させる際に、物納を求めることも可能だが、あえて貨幣で納税させている。そうすることで、貨幣が負債ピラミッドの頂点として君臨し、下層の負債に対する共通単位として機能するのである。仮に統合政府が発行する貨幣が納税手段として使えないのなら、貨幣の価値は不安定になり、結果的に他の安定した貨幣にとって代わられるリスクも発生するだろう。

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